「和辻哲郎随筆集』より「露伴先生の思い出」 和辻 哲郎 岩波文庫
大正期から戦後まで活躍した哲学者・倫理学者である和辻哲郎による人物評。初出は「文学」[1947(昭和22)年]。幸田露伴(こうだろはん:1867-1947)は旺盛(おうせい)な探究心と豊富な味解(みかい)力の持ち主であったが、その対象には明確な基準があり、硬骨漢(こうこつかん)でもあった。大学での態度や晩年の著作、日本語の用法へのこだわりなどのエピソードから露伴の人間像のある一面を語った一文。
*旺盛=活力や意欲が非常に盛んな様子。
*味解=じっくりと趣を味わい、理解すること。
*探究=物事の深い意味や、本質などを探り、明らかにしようとすること。
・探求=欲しいものを、どこまでも探し求めて手に入れようとすること。
*硬骨漢=意志が強く、権力に屈せず、容易に自分の主義・主張を曲げない男。
*幸田露伴=小説家・随筆家。東京生。名は成行(しげゆき)、号は蝸牛庵(かぎゅうあん)。電信修技学校卒業後電信技手として北海道へ赴任するが、文学への思いやまず帰京。『露団々(つゆだんだん)』『風流仏(ふうりゅうぶつ)』などの作品によって理想派の作家として文名を確立、写実派の尾崎紅葉と人気を二分した。代表作に『五重塔』『一口剣(いっこうけん)』等。芸術院会員。文化勲章受章。昭和22年(1947)没、80才。
**写実派=写実主義=現実を空想によらず、ありのままに捉えようとする美術上、文学上の主張のこと。
『わかりやすいはわかりにくい? 臨床哲学講座』 鷲田 清一 ちくま新書
ひとはなぜ、自由が拡大したのに不自由を感じ、豊かな社会になってかえって貧しさを感じるのか―現代人は、このようなパラドックスに気づき、向き合い、引き受けねば幸福にはなれない。「自由」「責任」の本質は何か。「弱さの力」とは何なのか。哲学の発想から、常識とは違う角度からものを見る方法を、読者とともに考える。人々と対話し思索(しさく)を深める“臨床(りんしょう)哲学”を実践してきた著者が、複雑化した社会のなかで、自らの言葉で考え、生き抜いていく力をサポートする。
*パラドックス=一般に正しいと考えられていることに反する主張や事態をいう。
*思索=秩序立てて考えを進めること。物の道理をたどって考えていくこと。
『清兵衛と瓢箪 小僧の神様』より「菜の花と小娘」 志賀 直哉 集英社文庫
瓢箪(ひょうたん)をこよなく愛した少年と、周囲の無理解なおとなたち。少年が永遠に失ってしまったものは何か?表題作「清兵衛と瓢箪」ほか、深い人間観察と鋭い描写力で短篇(たんぺん)小説のおもしろさをあますところなく伝える“小説の神様”志賀直哉の代表的短篇13篇。
*瓢箪=熟した瓢箪の果実の中味を取り除き、乾燥してつくった器。酒などを入れる。
**瓢箪(植物)=ウリ科の蔓性(つるせい)の一年草。ユウガオの変種。巻きひげで他に絡(から)んで伸びる。葉は心臓形。夏の夕方、白い花を開く。果実は中間がくびれて上下がふくらんだ形をし、熟すと果皮が堅くなり、苦味が強い。アフリカ・熱帯アジアの原産。
◎知っておくと得な知識
志賀直哉は、明治から昭和にかけて活躍した日本の小説家。白樺派を代表する小説家のひとり。
「小説の神様」と称せられ多くの日本人作家に影響を与えた。
代表作に「暗夜行路」「和解」「小僧の神様」「城の崎にて」など。
*白樺派
1910年(明治43年)創刊の同人誌『白樺』を中心にして起こった文芸思潮のひとつ。また、その理念や作風を共有していたと考えられる作家達のこと。
*思潮=その時代の人々が一般にいだく思想。思想の流れ。
覚えておきたい作家は、志賀直哉の他、武者小路実篤、有島武郎
・武者小路実篤の作品:「人生論・愛について」「友情」「愛と死」「真理先生」など
・有島武郎の作品:「小さき者へ・生れ出づる悩み」「一房の葡萄」「或る女」など
『僕たちが何者でもなかった頃の話をしよう』 山中 伸弥他 文春新書
京都産業大学での講演・対談シリーズ「マイ・チャレンジ一歩踏み出せば、何かが始まる!」。どんな偉大(いだい)な人にも、悩み、失敗を重ねた挫折(ざせつ)の時があった。彼らの背中を押してチャレンジさせたものは何だったのか。
*偉大=すぐれて大きいさま。りっぱであるさま。
*挫折=仕事や計画などが、中途(ちゅうと)で失敗しだめになること。また、そのために意欲・気力をなくすこと。
『昆虫の発音によるコミュニケーション』 宮武 頼夫 環境eco選書
人の耳には聞こえない振動や音波で昆虫(こんちゅう)たちがコミュニケーションを図っていることが判明して、その多様性と重要性が明らかになってきている。本書の第Ⅰ部と第Ⅱ部では、人の耳に多少とも聞こえる鳴き声や発音でコミュニケーションを図る昆虫について解説し、第Ⅲ部では主として人の耳に聞こえないが音波や振動音でコミュニケーションをとっている昆虫達の生き様(いきざま)について解説した(「はじめに」より)。
*生き様=その人が生きていく態度・ありさま。生き方。
『小夜衣(さよごろも)』 笠間書院
幼い頃、母に先立たれ、祖母の尼上を頼りに、山里に寂(さび)しく暮らす姫君。そんな姫君を、当代随一(とうだいずいいち)の貴公子(きこうし)兵部卿宮(ひょうぶきょうのみや)が見初(みそ)め、二世を契(ちぎ)る仲となる。ところが、宮は関白家に婿(むこ)取られ、姫君も、入内(じゅだい)した異母姉妹(いぼしまい)の母代として、宮仕え(みやづかえ)に駆り出される運命の激変、ために、二人の疎隔(そかく)は決定的なものとなる。御所では、帝(みかど)が、才色兼備(さいしょくけんび)の姫君にたちまち魅了(みりょう)され、尋常(じんじょう)ならざる執心(しゅうしん)ぶり、心穏やかでない継母(けいぼ)は、乳母子(めのとご)も民部少輔(みんぶのしょう)に命じて、姫君を拉致(らち)、監禁(かんきん)させる。絶望の底に沈む姫君に、民部少輔はひそかに野心(やしん)を燃え立たせる……。
継子(けいし)いじめ譚(たん)に「しのびね」型の趣向(しゅこう)を加味した、山里の姫君の苦難と栄達(えいたつ)の物語。
*当代随一=現代で最もすぐれているということの形容。
*貴公子=高貴な家柄(いえがら)の男子。貴族の子弟。
*契る=夫婦の約束を結ぶ。
*婿=娘の夫。特に、娘の夫として家に迎える男。
*入内=中宮・皇后となるべき人が正式に内裏(だいり:天皇の御所)にはいること。
*異母姉妹=異なる母親を持つ姉妹。
*宮仕え=宮中に仕えること。宮廷に出仕すること。
*疎隔=うとくなって、へだたりができること。また、へだたりをつくること。
*才色兼備=すぐれた才能と美しい容姿(=顔つきと姿)の両方をもっていること。 多くは女性についていう。
*魅了=すっかり相手の心を引きつけて夢中にさせてしまうこと。
*尋常=格別(特に、異常)なところもなく、ごく普通なこと。
*執心=ある事・物に強く引かれ、それが心から離れないこと。
*継母=父の妻で、自分と血のつながっていない母。
*乳母子=母に代わって、子に乳をやり、また、育てる女性の子ども。
*拉致=むりにひきつれてゆくこと。
*監禁=身体の自由を拘束し、一定の場所にとじこめて外に出さないこと。
*野心=分を越える(ように見える)大きな望み・たくらみ。
*継子=配偶者(=婚姻関係にある相手方。)の子で、自分の実子でないもの。
*譚=物語を語る。また、物語。
*しのびね=ひそひそ声。小声。しのび声。
*趣向=おもむき。意向。趣意。
*加味=あるものに他の要素を(少し)まぜ加えること。つけ加えること。
*栄達=高位高官にのぼること。出世すること。
**高位高官=身分と階級のどちらも高い役人のこと。「位」は位階。「官」は官職。
『文選』より「謝霊運(しゃれいうん)の詩」 昭明太子(しょうめんたいし)/編纂 岩波文庫
千五百年に及ぶ読解の歴史を刷新(さっしん)する詩篇の全訳注完結。編者・昭明太子による「文選序」の他、年表、詩題索引(さくいん)を収載(しゅうさい)。完結記念付録、新元号「令和」の語を含む、張衡「帰田の賦」の原文・訓読・訳文。
*刷新=弊害(=害となる悪いこと。)を除き去って、全く新しいものにすること。
*索引=書物の中の語句や事項の所在を捜し出す手引として編集した表や書物。
*収載=書物や資料などにのせること。収録。
『境界の現象学』 河野 哲也 筑摩選書
皮膚(ひふ)は自己と環境との境界である。家は公と私を隔(へだ)て、国境は国を隔てる。これら境界は本当は一体何を隔て、われわれに何を強(し)いているのか。境界を越えるという経験はいかなる意味をもちうるのか。境界を越えて、われわれはいかに他者と出会い、世界とつながることができるのか―。幾層(いくそう)もの境界を徹底的に問い直し、内/外を無効化する流動的でダイナミックな存在のあり方を提示する。身体・自己・世界の関係を考察してきた著者が、流体の存在論なる新境地に挑む。
*隔てる=間に(ある程度大きい)空間や時間を置く。
*強いる=他人がいやがるのに、無理にさせる。強制する。
*新境地=今までにない新しい境地。「境地」は心の状態などを指すが、「新境地を開く」などという場合は、特に芸術や創作活動などで、その人の独自の新しい世界を反映したような作品などを作り上げたことを指す。
『原民喜(はら たみき)戦後全小説』より「翳」 原 民喜 講談社文芸文庫
一九四五年八月六日、郷里(きょうり)の広島で被爆(ひばく)し一命を取り留めた原民喜は、この惨劇(さんげき)を書き残すことを決意する。“殺人光線”で焼けただれた肉体を、死にゆく者の呻(うめ)き声を、遺体に埋もれ地獄絵図と化した光景を、克明(こくめい)に描き尽くす。戦禍(せんか)の記録を文学へ昇華(しょうか)させた傑作「夏の花」三部作、亡妻(ぼうさい)への想いが滲(にじ)む「美しき死の岸に」ほか計三十九篇。原爆を生み落した世界と人類に突きつける、文学の結晶。
*郷里=ふるさと。生れ故郷。
*被爆=原水爆による攻撃を受けること。また、その放射能の害をこうむること。
*惨劇=目も当てられない、むごたらしい出来事。
*呻き=苦しみや痛みなどのために出す低い声。
*克明=細かいところまで念を入れて手落ちのないこと。また、そのさま。
*戦禍=戦争による被害。
*昇華=物事が一段上の状態に高められること。
*亡妻=死んだ妻。なき妻。
*滲む=(多く「にじませる」の形で)それとなく現れる。
Dr.関塾 新川1丁目校のホームページにお越しいただき、誠にありがとうございます。
【4/25(土)~5/6(水)】
「ゴールデンウィーク休校」とさせていただきます。
お問い合わせにつきましては、
5/7(木)14時以降に順次対応いたしますので、よろしくお願いいたします。
なお、状況次第になりますが、現時点では、
5/7(木)以降、夏休みに入るまでは、日曜日を除き、開校(=開講)予定です。
『俳句の不思議、楽しさ、面白さ ーそのレトリック』 武馬 久仁裕 黎明書房
あなたは、俳句には不思議なこと、面白いことがいっぱいあることを知っていますか?俳句に使われているひらがなとカタカナの違いを、知っていますか。俳句は縦書きだから面白いことを、知っていますか。古典仮名遣(かなづか)いのどこが面白いか、知っていますか。俳句では、「『雲がない』と言っても『雲』がある」ことを、知っていますか。風花(かざはな)は冬の季語ですが、春がよりそっていることを、知っていますか。その他にも俳句には、まだまだ不思議なこと、面白いことがあります。この本を読んで、俳句の世界に、楽しく遊んでください。
*風花=晴天に、花びらが舞うようにちらつく雪。山岳地帯の雪が上層気流に乗って風下側に落ちてくるもの。
『ゴリラからの警告「人間社会、ここがおかしい」』 山極 寿一 毎日新聞出版
進化の果てで、テクノロジーに疲れ、戦争に倦(あぐ)む。私たちが幸福を掴(つか)むためには、あと何が必要なのか。ゴリラ研究の権威による、霊長類(れいちょうるい)視点の文明論。動物の一種としての人間に立ち返り、これからの共同体・国家のあり方を問い直す。
*倦む=物事に行きづまって、どうにもしようがなくなる。また、もてあます。あぐねる。
*掴む=自分のものとする。手に入れる。
『世界は美しくて不思議に満ちている 「共感」から考えるヒトの進化』 長谷川 眞理子 青土社
連綿(れんめん)とつづく進化史において、ヒトは近年、異常な状態に置かれている。70億人を超える世界人口、化石燃料を中心とした大量のエネルギー消費、IT技術の急速な進歩―。足り過ぎているのに不足感を募らせよと迫りくる文明の行き着く果てとは?ヒトが長い時間をかけて進化させてきた「共感」という能力をもう一度想い出し、次世代へとつなげるために、いま、立ち止まって考える。
*連綿=長くつながり続いて絶えないさま。
『無名草子』 新潮社
好評シリーズが装(よそお)いを新たに。古語辞典は不要です!昔男をめぐる珠玉(しゅぎょく)の歌物語の数々が「みやび」な世界を織りなす『伊勢物語』。継母(ぎぼ)にいじめられ、「落窪(おちくぼ)の君」と呼ばれていた女君(おんなぎみ)の波瀾万丈(はらんばんじょう)の運命を描く、平安時代のシンデレラストーリー『落窪物語』。座談(ざだん)形式で、『源氏物語』や『伊勢物語』を論じ小野小町や清少納言や紫式部を批評(ひひょう)する、中世初期の異色評論『無名草子』。
*珠玉=美しいもの、りっぱなもののたとえ。特に、詩文などのすぐれたものを賞していう。
**賞する=ほめたたえる
*みやび=ものの趣を解(かい)し、けだかく、動作なども優美(ゆうび)なこと。
*義母=義理の母。養母、また妻や夫の母など。
*女君=貴族の息女(身分ある人の娘のこと。)の敬称。姫君。
*波瀾万丈=劇的な変化に富んでいること。
**劇的=劇を見ているように緊張や感動をおぼえるさま。
*座談=すわって気楽に話し合うこと。
*批評=事物の善悪・優劣・是非などについて考え、評価すること。
**優劣=すぐれていることと、おとっていること。
**是非=良い(=是)ことと悪い(=非)こと。
『ベスト・エッセイ2018』より「”今どきの若い者”はことば遣いにうるさすぎる」 飯間 浩明 光村図書出版
「そうそう、あるある! 」「へえ~知らなかった」「なるほど、おもしろい! 」「この人って、こういうことを考えていたんだ」などなど…。
さまざまなジャンルの書き手たちがえがく、日常生活から切り取った機知(きち)に富んだ随想(ずいそう)、意見文。
そして亡くなられたあの方に捧(ささ)げる一文など、2017年に新聞や雑誌などに発表された数多くのエッセイの中から、77編を厳選(げんせん)しました。
どこから読んでも楽しめる珠玉(しゅぎょく)のエッセイ群を、どうぞご堪能(たんのう)ください。
*機知=その場に応じてとっさに働く鋭い知恵。
*随想=あれこれと心に浮かぶままに思うこと。それを書きとめた文章。
*捧げる=尊ぶべき(時には、大切に思う)対象に向けて、ものや真心を差し出す。
*厳選=厳重な基準によって選ぶこと。
*珠玉=美しいもの、りっぱなもののたとえ。特に、詩文などのすぐれたものを賞していう。
*堪能=十分に満足すること。
『ブロードキャスト』 湊 かなえ KADOKAWA
町田圭祐は中学時代、陸上部に所属し、駅伝で全国大会を目指していたが、3年生の最後の県大会、わずかの差で出場を逃してしまう。その後、陸上の強豪(きょうごう)校、青海学院高校に入学した圭祐だったが、ある理由から陸上部に入ることを諦(あきら)め、同じ中学出身の正也から誘われてなんとなく放送部に入部することに。陸上への未練を感じつつも、正也や同級生の咲楽、先輩女子たちの熱意に触れながら、その面白さに目覚めていく。目標はラジオドラマ部門で全国高校放送コンテストに参加することだったが、制作の方向性を巡って部内で対立が勃発(ぼっぱつ)してしまう。果たして圭祐は、新たな「夢」を見つけられるか―。
*強豪=勢いが盛んで強いこと。また、その人。
*勃発=事件などが突然に起こること。
『続百物語怪談集成』より「万世百物語」 烏有庵(うゆうあん) 叢書江戸文庫
青い行灯(あんどん)に灯心(とうしん)を百本入れ、怪談(かいだん)が1話終わるごとに灯心を1本1本消してゆく。怪談が100話に至り、火が全て消えたとき……。怪談集「諸国百物語」「御伽(おとぎ)百物語」「太平(たいへい)百物語」を収録。
*行灯=照明具の一種。円形または四角の木や竹のわくに紙をはり、中に油皿を置いて火をともした。
*灯心=あんどん・ランプなどの芯(しん)。
*怪談=ばけもの・幽霊(ゆうれい)などが筋の中心になっている話。
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中学三年の祐人は、いつも薫、理奈、春樹とプラネタリウムのある科学館で過ごしていた。宇宙に憧(あこが)れる四人は似た夢を持ち、同じ高校に進む。だが、月日が経ち、祐人は逃げた。夢を諦めて町役場で働く彼は科学館を避け、幼馴染(おさななじみ)の三人をも避け続ける。ところが、館長の訃報(ふほう)を受けて三人に会うことに。そこで科学館の閉鎖を知り…。瑞々(みずみず)しい筆致(ひっち)で描かれる青春群像劇(ぐんぞうげき)。第29回小説すばる新人賞受賞作。
*憧れる=この人や心をひく物事こそ、理想だと、吸い寄せられるように心を寄せる。
*幼馴染=幼い頃から仲が良い人、あるいは物心ついたときからの顔馴染み。
*訃報=人の死亡の知らせ。
*瑞々しい=若々しく新鮮である。
*筆致=絵や文字などの筆づかいのおもむき。また、文章の書きぶり。
*群像劇=それぞれ独立した物語を持った、複数の登場人物によって進行していく創作作品の総称。
『能 650年続いた仕掛けとは』 安田 登 新潮新書
なぜ650年も続いたのか。足利義満、信長、秀吉、家康、歴代将軍、さらに、芭蕉に漱石までもが謡(うた)い、愛した能。世阿弥(ぜあみ)による「愛される」ための仕掛けの数々や、歴史上の偉人(いじん)たちに「必要とされてきた」理由を、現役の能楽師が縦横(じゅうおう)に語る。「観(み)るとすぐに眠くなる」という人にも、その凄(すご)さ、効能、存在意義が見えてくる一冊。その真髄(しんずい)をわし摑(づか)みにできる、類書(るいしょ)なき最強入門書!
*謡う=音楽的な高低やリズムをつけて発声すること。
*偉人=すぐれた業績を成し遂げた人。偉大な人。
*縦横=思いのままに振る舞うこと。また、そのさま。自由自在。
*真髄=物事の最もかんじんな点。その道の奥義。
*わし掴む=ワシが獲物をつかむように、手のひらを大きく開いて荒々しくつかむこと。
*類書=内容などが似ている書物。同種類の書物。
『枕草子』 清少納言 岩波文庫
冷静で細やかな観察、才気煥発(さいきかんぱつ)な筆致によって、わが国随筆文学を代表する一書として、本書はあまりにも有名である。一段一段の文章から、平安時代の生活と感覚の具体相を、万華鏡(まんげきょう)を見るようにうかがい知ることができ、また筆者と中宮定子(ちゅうぐうていし)との美しい魂の触れあいが、この草子の文学的香気(こうき)をいっそう高めている。
*才気煥発=すぐれた才知の働きが盛んに現れること。また、そのさま。
*中宮定子=平安時代の人物。 第66代一条天皇の皇后・藤原定子(ふじわらのていし/さだこ)のこと。
*香気=よいにおい。
『ナイスキャッチ!Ⅲ』 横沢 彰 新日本出版社
怪我(けが)で部活を休んでいた堂島先輩が復帰した。先輩の代役で野球部に入部したこころ。自分の居場所はもうないのか。こころは堂島先輩にキャッチャーマスクを差し出す。「対決しないか」先輩は真顔で言った――。勝つことなんてあり得ないとしても、必死で練習してきた成果を試してみたい。こころは、覚悟を決めてうなずいた。
『はじまりの社会学 問いつづけるためのレッスン』 奥村 隆 ミネルヴァ書房
社会が他でもありうる可能性を開く15の〈問い〉による社会学入。
自分自身の〈問い〉を発見し、手放さずに考えつづけるにはどうしたらよいか、社会が他でもありうる可能性を開く
新たな社会学的想像力への入門書。
『日本随筆大成 第1期 第18巻』より「閑田次筆(かんでんじひつ)」 伴 蒿蹊 吉川弘文館
江戸後期の随筆。4巻。伴蒿蹊(ばんこうけい)著。文化3年(1806)刊。「閑田耕筆(かんでんこうひつ)」の続編。紀実(きじつ)・考古(こうこ)・雑話(ぞうわ)に分類、古物・古風俗の図を入れて収める。
*伴 蒿蹊(ばんこうけい)=江戸後期の国学者。名は資芳(すけよし)。別号閑田子(かんでんし)。近江(おうみ)の人。京都で武者小路実岳(さねたか)に歌文を学ぶ。和歌に長じ、小沢蘆庵(おざわろあん)、澄月(ちょうげつ)、慈延(じえん)とともに平安四天王の一人。
*考古=遺跡・遺物によって過去の文化を研究すること。
*雑話=とりとめもない話。雑談。
*近江=近江国は、かつて日本の地方行政区分だった令制国の一つ。
『中国古典小説選12』より「笑林(しょうりん)」 邯鄲淳(かんたんじゅん) 明治書院
中国の最古の笑話(しょうわ)集。三国時代の魏(ぎ)の邯鄲淳の撰(せん)とされる。3巻。
*邯鄲淳=中国、三国時代の魏の書家、文学者。潁川(えいせん=河南(かなん)省) の人。
字、子叔。曹操(そうそう)に取立てられ、曹丕 (そうひ) のとき博士、給事中(きゅうじちゅう)になったが、そのときには 90歳をこえていたという。儒者として名があり、また中国最古の笑話集『笑林』の著者とされる。
**給事中=中国の古い官名。秦漢時代には、宮中の事務に任じたが、唐以後は王命を下官に伝える要職となり、明清には監察(かんさつ)の職となった。
**監察=情況を見届けて察知すること。特に、視察し監督すること。
**情況=その場のありさま。あることの動きとの関連においてながめられた、ある場面のありさま。
**察知=見聞きしたことから相手の様子や出方をおしはかって知ること。
*撰=詩や文章を作る。/編集・著述する。