新着情報 / お知らせ

『情動の哲学入門』 信原 幸弘 勁草書房
情動はときに誤り、害をもたらす。やはり理性に従って行動すべきなのか。理性的に生きることが幸福な生につながるのか。実はそうではない。情動こそが状況に相応しい行動を生み出すのであり、理性は情動の働きを調整しているというのが本当のところである。情動に着目することで新たな展開を見せる心の哲学の最前線。
*情動=恐怖・驚き・怒り・悲しみ・喜びなどの感情で、急激で一時的なもの。
『利休と遠州』 薄田 泣菫 青空文庫
堺衆の数寄者(すきしゃ)が大金をはたいて買った肩衝(かたつき)の茶入(ちゃいれ)を手に入れ、茶会(ちゃかい)の席に千利休を招いて見立てをしてもらおうとするが、何もしてもらえなかったことに腹を立てて、その肩衝を割ってしまう。もったいなく思った客の一人がそれを拾い、無造作に修復してしまう。
その後、無造作に修復された肩衝を見た利休が、それを「結構至極(けっこうしごく)」と評価してしまい…。
*堺衆=室町時代から安土桃山時代に、堺で自治の指導的役割を果たした評定組織またはその組織の構成員。
*数寄者=風流人。とくに茶の湯を趣味とする人。
**風流=上品な趣(おもむき=味わい。面白み)があること。みやびやかなこと。また、そのさま。
*肩衝=茶入れの形の一つ。肩の部分が張っているもの。肩衝茶入れ。
*無造作=
(1)たやすいこと。また、そのさま。
(2)技巧をこらさないこと。念入りでないこと。また、そのさま。
**技巧=技術上の工夫。特に、芸術の制作や表現における技術的な工夫。
*結構=よくまとまった状態であること。
*至極=極限(=物事の限度ぎりぎりのところ)・極致(=力をつくして最後にたどりつく所・有様)に達していること。この上ないこと。また、そのさま。
『ともに読む古典 中世文学編』より「想像力のあそび」 深沢 眞二 笠間書院
古典・古文が苦手だと思っているあなたへ語り継ぐ、古典文学の世界。
古典文学の魅力を伝えたくてたまらない研究者と、生徒を前にして、古文の面白さや学ぶ意義をわかってもらおうと日々奮闘している、現場教員たちとのコラボレーションで贈る前代未聞の本。研究者の本気と現場の教師の本気で、古典の魅力を届けます!
*奮闘
(1)力をふるって戦うこと。奮戦。
(2)力いっぱい努力すること。
『ピアノをきかせて』 小俣 麦穂 講談社
「千弦ちゃんのピアノはすごいけど、いっしょにうたったり踊ったりできない」響音は、姉の心をゆさぶるため、ふるさと文化祭に出場することになったのですが…。感性を信じて生きる姉妹が奏(かな)でる音楽小説。
『声のサイエンス あの人の声は、なぜ心を揺さぶるのか』 山﨑 広子 NHK出版新書
なぜ人は録音した自分の声が嫌いなのか?どうして「いい声」の人の言葉には、そうでない人より説得力があるのか?私たちが普段何気なく使い、聞いている声には、じつは絶大な力が秘められている。それは人の心を動かし、揺さぶり、自分自身の心身さえ変えていく力を持っている―。声という神秘的で謎に満ちた「音」の正体を、多彩な知見と豊富な事例からひもとく驚きの書。
*絶大=きわめて大きいこと。また、そのさま。
*多彩=
(1)色の種類の多いこと。いろどりが多く美しいこと。また、そのさま。
(2)変化や種類が多くにぎやかなこと。また、そのさま。
*知見=実際に見て知ること。また、見聞して得た知識。
『ここからはじめる短歌入門』 坂井 修一 角川選書
31音という限られた「ことば」で無限の世界を表現できる短歌。恋、家族、老いといった人生のステージがどう歌になるのか、短歌の技法にはどんなものがあるのか、近現代の秀歌を通して学ぶ。はじめて短歌を作る人から、これからもずっと作り続けたい人まで、必読の1冊!“歌を詠み、読む”ことの楽しさをじゅうぶんに味わえる、21世紀の短歌入門書の決定版。
*短歌=和歌の一体。五・七・五・七・七の5句31音からなる歌。
*秀歌=すぐれた和歌。
*詠む=詩歌をつくる。
**詩歌
(1)漢詩と和歌。
(2)詩・和歌・俳句など(韻文の)総称。
***総称=ある共通点を持つ個々のものを何種かまとめて、全体として一つの呼び名でいうこと。また、その名前。」
『小説現代 2018年7月号』より「ジョックロックに笑え」 額賀 澪 講談社
怪我(けが)で野球をあきらめた、元エースの大河。甲子園を目指すチームメイトのため、吹奏楽部の不破に協力を願い出る。
元エースと吹奏楽バカがタッグを組んだ。甲子園を目指すかつての仲間のためにできることは?熱風すさぶ男子校応援ドラマ!
*ジョックロック=原曲は、1990年代にヤマハが自社のキーボードにサンプルとして添付していた楽曲だと言われている。智辯(ちべん)学園和歌山高校吹奏楽部が高校野球の応援曲として演奏する有名な曲。
*すさぶ=ある方向にいよいよ進む。特に、雨・風などの勢いが増す。
『現代思想講義』 船木 亨 ちくま新書
「自由で平等な個人」という近代にあった理想。だが、明らかにそれは誤りである。ポピュリズムが跋扈(ばっこ)するポスト・トゥルースの現代は、「群れ」社会への転換をすでに遂げている。その転換も昨今急激に生じたのではない。現代思想で論じられてきたその社会の変容を、順に「人間」「国家」「意識」「政治」「道徳」「思考」の六つの主題について解き明かしていく。AIで人間が不要になる、といった皮相(ひそう)な議論よりもはるかに深い次元で人間の終焉(しゅうえん)を考察し、混迷する人類文明の行く末と、これからの生き方について講義する。
*ポピュリズム=政治に関して理性的に判断する知的な市民よりも、情緒(じょうちょ)や感情によって態度を決める大衆を重視し、その支持を求める手法あるいはそうした大衆の基盤に立つ運動。
**情緒¬=喜び、悲しみ、怒り、恐れなどによって代表される感情群。
*跋扈=わがもの顔に振る舞うこと。のさばりはびこること。
**わがもの顔=自分の領土や領域であるかのように威張ったり大きな顔をすること。
*ポスト・トゥルース=世論(せろん/よろん)形成において、客観的な事実より、虚偽(きょぎ)であっても個人の感情に訴えるものの方が強い影響力を持つ状況。事実を軽視する社会。
**世論=特定の大きな社会集団、公衆がもっているある論争的な問題についての意見、態度、判断などの一般的傾向。
**虚偽=うそいつわり。真実でない事を、誤ってまたは故意(こい=わざとすること)に、真実だとすること。
*皮相=
(1)物事の表面。うわべ。うわっつら。
(2)うわべだけを見て判断し、物事の本質に至らないこと。また、そのさま。
*終焉=命の終わろうとすること。死のまぎわ。
『洛中洛外画狂伝・狩野永徳(らくちゅうらくがいがきょうでん・かのうえいとく)』 谷津 矢車 徳間書店
わしは、狩野を越える。戦国末期の天才絵師・狩野永徳の狩野家の中での苦悩や、政治、戦争に翻弄(ほんろう)されながらも強く生き抜く姿を描く。
*狩野永徳=1543年生まれ。1590年没。室町時代後期~安土桃山時代の画家。早くから画才を発揮。織田・豊臣氏に仕え、安土城・大坂城・聚楽第(じゅらくだい)などの障壁画に筆をふるった。豪壮華麗な桃山障壁画様式を確立し、また狩野派全盛の基礎をつくった。
**聚楽第=天正13(1585)年関白に就任した豊臣秀吉が、京都内野の大内裏跡に建てた邸宅。
**障壁画=襖(ふすま)・衝立(ついたて)などに描いた障子絵、床の間・違い棚や長押(なげし)の上の壁などに貼(は)りつけた壁貼付(はりつけ)絵などの総称。広義には障屏(しょうへい)画と同義に用いられる。
**豪壮=いきおい強くさかんなさま。かまえが大きくはでなさま。
**華麗=はなやかで美しいこと。はでやかなこと。
*翻弄=思いのままに相手をもてあそぶこと。
**もてあそぶ=
(1)手に持って遊ぶ。いじくる。
(2)まじめに扱うべきものをおもちゃにする。
『子どもと本』 松岡 享子 岩波書店
財団法人東京子ども図書館を設立、以後理事長として活躍する一方で、児童文学の翻訳、創作、研究をつづける第一人者が、本のたのしみを分かち合うための神髄(しんずい)を惜(お)しみなく披露(ひろう)します。長年の実践に力強く裏付けられた心構えの数々から、子どもと本への限りない信頼と愛が満ちあふれ、読者をあたたかく励ましてくれます。
*神髄=物事の最もかんじんな点。その道の奥義(おうぎ/おくぎ)。
**奥義=学問・芸能・武術などの最も大事な事柄。最もかんじんな点。
*惜しむ=
(1)心残りに思う。残念がる。
(2)金品などを出すことを、もったいないと思う。
*披露=1.
(1)公に発表すること。
(2)文書などをひらいて皆に見せること。
『一休ばなし』 仮名草子
仮名草子(かなぞうし)。1668年(寛文8)刊。4巻。編著者未詳。一休和尚の逸話集。一休の幼少のころのとんちばなしに始まって、蜷川新右衛門(にながわしんえもん)との交遊、関の地蔵に小便をかける話、タコを食う話など46話がある。笑話(わらいばなし)本として歓迎され、また《一休関東咄(いっきゅうかんとうばなし)》《二休咄(じきゅうばなし)》のごとき模倣(もほう)書も作られた。一休の伝説化に果たした役割は大きい。
*仮名草子=江戸初期に行われた小説類の呼称。婦人・子供向けに、平易(へいい)な仮名(かな)文で書かれた、啓蒙(けいもう)娯楽(ごらく)を主としたものが多い。
**啓蒙=人々に新しい知識を与え、教え導くこと。
**娯楽=心を慰(なぐさ)め、楽しむこと。
***慰める=心を楽しませる。心をなごやかに静める。
*逸話=その人についての、あまり知られていない興味深い話。エピソード。
*一休和尚=室町前期の臨済宗の僧。
*笑話本=笑い話や冗談の類でまとめた書籍。
*模倣=自分で工夫して作り出すのでなく、既にできているものをまねること。
『NHKカルチャーラジオ 文学の世界 詩と出会う 詩と生きる』 若松 英輔 NHK出版
語りの名手が、あなたの詩心を呼び覚ます!
「詩」に込められた切実な想いから、私達は何を得ることができるのか? 「詩」を身近に感じ、味わい、それと共に生きる豊かさを探る。
『菊のきせ綿 江戸菓子舗 照月堂』 篠 綾子 角川春樹事務所
江戸駒込の菓子舗照月堂で女中として働きながら、菓子職人を目指す少女・瀬尾なつめ。自分よりも後に店に入ったお調子者の安吉が、主・久兵衛のもと職人見習いを始めたことに焦りを感じつつ、菓子への想いは日々深まるばかりだ。そんな折、照月堂に立て続けで珍しい客が現れる。なつめを訪ねてきた江戸市中でも高名(こうみょう/こうめい)な歌人。そして、上野にある大きな菓子店氷川屋の主とその娘である。それぞれの客により、店には驚きと難題がもたらされて...。
*女中=家庭や旅館・料理屋などに雇われて、炊事・掃除その他の用をする女性を言った語。お手伝いさん。
*お調子者=
(1)調子にのって軽はずみなことを言ったりしたりする人。おだてられるとすぐ得意になって勢いづく人。おっちょこちょい。
**軽はずみ=よく考えず、調子に乗ってすること。軽率。
(2)その場に合わせていい加減なことを言う人。無責任に迎合する人。
*高名=高い評価を受け、広く一般の人々に名前を知られていること。また、そのさま。こうみょう。
『無名抄(みみょうしょう)』 鴨 長明(かもの ちょうめい) 角川ソフィア文庫
『方丈記』の作者、鴨長明の歌論書。和歌に関する知識を網羅したり秀歌論(しゅうかろん)を展開するそれまでの歌論とは違い、歌人たちの逸話(いつわ)や世評(せひょう)、宮廷歌人だった頃の楽しい思い出なども楽しめる肩のこらない説話的な内容をあわせもつ。一流の歌人としても知られた長明の人間像を知る上でも貴重な書。
*鴨長明=1155年生まれ。1216年没。鎌倉前期の歌人。通称、菊大夫(きくだゆう)。名は「ながあきら」とも読む。京都下鴨(しもがも)神社禰宜(ねぎ)の家に生まれ、のちに社司(しゃし)に推挙(すいきょ)されたが実現せず、失意のうちに出家。山城国日野の外山(とやま)に方丈の庵(いおり)を結び、隠遁生活を送った。著「方丈記」「発心(ほっしん)集」「無名抄」など。
**社司=神社で、神に仕え、社務を執る者。神職。神官。神主(かんぬし)。やしろのつかさ。
**推挙=ある官職・仕事に適当な人だとして、その人をその地位につけるように勧めること。
**隠遁生活=世事を逃れ、隠れ住むこと。
***世事=世間(せけん=世の中。社会。)のこと。
*歌論=和歌に関する理論や評論。特に、和歌の本質・要素・分類・修辞・語法などに関する論。*網羅=残らず取り入れること。余りなく尽くすこと。
*宮廷歌人=諸皇子に歌を捧げたり、行幸(ぎょうこう)に従駕(じゅうが)して公の場で歌を詠む歌人。
**行幸=天皇のお出まし。
**従駕=天子の行幸に随行(ずいこう)すること。
***随行=目上の人の共をし、つき従って行くこと。また、そのともの者。
*逸話=その人についての、あまり知られていない興味深い話。エピソード。
*世評=世の中の評判。
*説話=話。物語。特に、語り伝えられた神話・伝説・民話など。
**民話=民衆(柳田國男のいう「常民」)の生活のなかから生まれ、民衆によって口承(口伝えで伝承)されてきた説話のこと。
『新日本古典文学大系52 庭訓往来 句双紙』より「実語教童子教諺解」 岩波書店
手紙文の形で社会生活に必要なさまざまなことばを手習わせることを目的のひとつとした『庭訓往来』、禅修行者にとっての座右の書でもあり、また心の指針を与えてくれる成句集として広く一般にも愛好された『句双紙』 室町から江戸時代にかけて圧倒的に普及し、日本人の言語生活の基層をかたちづくってきた作品2編
*禅
1.精神を統一して真理を徹見する。
2.座禅を宗とする仏教の教派。禅宗。禅宗の修行
**座禅=座布団の上であぐらをかいて姿勢を正し、精神を統一する
**宗=教説(=教義¬=宗教の(各宗派の)教えの内容・主張)の中心となる根本的な趣旨
*修行=学術・技芸を習い修めること
*座右の書=枕頭の書(ちんとうのしょ)とも。常に身近において読む書籍のこと
*指針=物事を進めるうえでたよりとなるもの。参考となる基本的な方針
*成句集=連句や俳句を集めた書物。
*基層=ある物事の基礎となって横たわっているもの
『たゆたえども沈まず』 原田 マハ 幻冬舎
誰も知らない、ゴッホの真実。
天才画家フィンセント・ファン・ゴッホと、商才溢れる日本人画商・林忠正。
二人の出会いが、〈世界を変える一枚〉を生んだ。
1886年、栄華を極めたパリの美術界に、流暢なフランス語で浮世絵を売りさばく一人の日本人がいた。彼の名は、林忠正。その頃、売れない画家のフィンセント・ファン・ゴッホは、放浪の末、パリにいる画商の弟・テオの家に転がり込んでいた。兄の才能を信じ献身的に支え続けるテオ。そんな二人の前に忠正が現れ、大きく運命が動き出すー。『楽園のカンヴァス』『暗幕のゲルニカ』の著者によるアート小説の最高傑作、誕生!
*栄華を極める=莫大(ばくだい)な財力や権力を手にして、これ以上ないというほど富み栄えるさまを指す表現のこと
**莫大=数量がきわめて大きいこと
*流暢=すらすらと話して(書いて)言葉遣い(ことばづかい)によどみがないこと。なめらか
**よどみ=「よどむ」こと
***よどむ=水または空気の流れがとどこおりとまる。また、物事がすらすらとは進まない
*浮世絵=江戸時代に成立した絵画のジャンル
*放浪=あてもなくさまよい歩くこと。さすらい
*画商=絵を売り買いする商人(=商売をする人)
*献身的=自分のことを顧(かえり)みず、心身ともにささげるほど他のために尽くすさま
**顧みる=
1.過ぎ去った事を思い起こす
2 .心にとどめ考える。気にかける
3 .振り返って見る
*林忠正=嘉永(かえい)6年11月7日生まれ。越中(富山県)出身。明治11年パリ万国博覧会の仕事でフランスにわたる。パリで美術品店をひらき、浮世絵など日本美術を紹介する。また印象派の絵画を日本にもたらした。明治39年4月10日死去。54歳
『人工知能時代を〈善く生きる〉技術』 堀内 進之介 集英社新書
いつでも・どこでも・何でも・誰でもネットに接続され、日々、膨大な量の情報が交わされている。これを人工知能で分析することで近未来を予測し、適切な対応を講じる「あたらしい技術」の導入が進む。この技術は生活を便利にする一方で、終わらない仕事を増やし、人間関係に疲れる世の中に変えていく。本書では、技術と人間の関係を根本から問い直し、近代が前提としてきた人間中心主義を批判しながら、「技術による解放論」のビジョンを示すことで、いかに“善く生きる”かを問う!
*人工知能=人間の知的ふるまいの一部をソフトウェアを用いて人工的に再現したもの
*講じる
1.講義をする。
2.考えをめぐらして行う。手だてを考える
*人間中心主義=人間が世界全体の中心あるいは目的であるとする世界観、また、すべての存在者のなかで、人間にもっとも根本的で重要な地位を与えようとする立場
『翻訳をめぐる七つの非実践的な断章』 沼野充義 早稲田文学(228号)
翻訳についてのさまざまな見解や、自身の経験も踏まえながら、翻訳家が直面する困難について論じたものである。
著者略歴
沼野 充義(ぬまの みつよし)
1954年東京生まれ。東京大学卒、ハーバード大学スラヴ語学文学科に学ぶ。
東京大学教授
2002年、『徹夜の塊 亡命文学論』(作品社)でサントリー学芸賞受賞
2004年、『ユートピア文学論』(作品社)で読売文学賞評論・伝記賞受賞。
著書に『屋根の上のバイリンガル』(白水社)、『ユートピアへの手紙』(河出書房新社)、訳書に『賜物』(河出書房新社)、『ナボコフ全短篇』(共訳、作品社)、スタニスワフ・レム『ソラリス』(国書刊行会)、シンボルスカ『終わりと始まり』(未知谷)など
『上林暁傑作小説集 星を撒いた街』より「花の精」 上林暁 夏葉社
著者略歴
上林 暁(かんばやし あかつき)
1902年高知県生まれ。東京大学英文科卒。
改造社(かいぞうしゃ)の編集者を経て、作家の道へ。
『明月記』(1942)、『聖ヨハネ病院にて』(1946)、脳溢血によって半身不随となった後に発表した『白い屋形船』(1963)、『ブロンズの首』など、長きにわたって優れた短編小説を書き続けた。
1980年没
妻が病で入院し、長期間不在の「私」の家には、三人の子どもと、夫に先立たれ途方にくれている妹がいる。「私」にとって庭の月見草は心を慰めてくれる存在だったが、ある日庭師が雑草だと思い、月見草を全て抜いてしまう。「私」は空虚な気持ちで楽しめない生活を過ごしていたが、友人とともに月見草に再会し、妻への想いに耽(ふけ)るのであった…。
*耽る=ある一つのことに夢中になる。熱中する。
古典:御伽草子(おとぎぞうし)『玉水物語(たまみずものがたり)』
玉水物語(たまみずものがたり)とは、高柳宰相(さいしょう)の娘という高貴なお姫様に恋をしてしまった狐の物語。室町時代から近世初期(きんせいしょき)の作品と言われているが、成立年月日や作者は不詳。
ある日お姫様が花園に出て遊んでいるのを垣間見た狐が、女子に変身してお姫様の侍女(じじょ)となり、玉水の前と呼ばれる。あるとき紅葉合せ(もみじあわせ)のときに、お姫様のために珍しい紅葉の枝を献上(けんじょう)したところ、その紅葉の評判が宮中にまで聞こえてしまい、時の帝(みかど)の仰(おお)せによって、お姫様は宮中に入内(じゅだい)することになってしまった。その為、狐の玉水は、苦衷(くちゅう)の歌を残して去ってしまう…。
*御伽草子(おとぎぞうし)=室町時代から江戸時代初期にかけてつくられた短編の物語草子の総称。
*侍女=身分の高い人に仕え、身の回りの世話をする女。
*紅葉合せ(もみじあわせ)=紅葉の美しさを和歌で詠(よ)んで、どっちの歌が優れているかを競う遊び。
*献上(けんじょう)=奉(たてまつ)ること。さしあげること。
*入内(じゅだい)=中宮(ちゅうぐう)・皇后(こうごう)となるべき人が正式に内裏(だいり)にはいること。
**中宮=日本の天皇の妻たちの呼称の一つ。
**皇后=天皇・皇帝の妻。きさき。
**内裏=「おおうち」ともいう。天皇の御所、転じて天皇をさす。
*苦衷(くちゅう)=苦しい心の中。
※古文で書かれていますので、だいたい理解できれば大丈夫です。
漢文:『杜詩詳註(とししょうちゅう)』 杜甫著 ; 仇兆鰲注
清代の仇兆鰲(きゅうちょうごう)による杜甫の詩文の注釈書で、今日における代表的な杜詩(とし)のテキストです。編年体(へんねんたい)で排列(はいれつ=配列)され、圏発(けんぱつ)という声調を示す音注の多さに特徴があります。
*編年体=事実の起こった順に年月を追って記す、歴史書の書き方。
*圏発=漢字の四隅(よすみ)につける四声(しせい)を示すための半円形のしるし。
**四声=中国語を発音する際に使う、4種類の声調(音の高低・変化)のこと。
『こいしいたべもの』 森下典子 文春文庫
母手作りの、バターがとろける甘いホットケーキ。
父が大好きだった、少し焦げ目がついたビーフン。
遅い青春時代に食べた、夜明けのペヤング…。
味の記憶をたどると、眠っていた思い出の扉が開き、胸いっぱいになった事はありませんか?
優しい視点でユーモアたっぷり、胸にホロリとくる22品の美味しいカラーイラストエッセイ集。
『はじめての哲学的思考』 苫野一徳 ちくまプリマ―新書
なぜ人を殺してはならないの?
生きる意味とは何だろう?
人生の問いから社会の難問まで力強く「解き明かす」哲学の考え方を知ろう。
『韓非子(かんぴし)』 韓非 岩波文庫
中国戦国時代の法家である韓非(かんぴ)の著書。
春秋戦国時代の思想・社会の集大成と分析とも言えるものである。
書中では、分かり易い説話から教訓を引き、徹底的に権力の扱い方とその保持について説いている。
*韓非(かんぴ)=(出生年不詳~前223頃)中国、戦国時代末期の思想家。韓の公子。荀子(じゅんし)に師事し、法家の思想を大成した。韓の使者として秦(しん)に赴(おもむ)くが、李斯(りし)の讒言(ざんげん)により投獄(とうごく)され、獄中死(ごくちゅうし)する。
*春秋戦国時代=古代中国における周王朝の後半期に区分される時代であり、紀元前770年に周が東西に分裂してから、紀元前221年に秦が中国を統一するまでの、およそ550年に渡る期間を指す。
*荀子=中国戦国時代末の思想家。「性悪説」を唱えた。「性善説」=孟子(もうし)
*李斯=中国秦代の宰相
*讒言=他人をおとしいれるため、ありもしない事を目上の人に告げ、その人を悪く言うこと。
『中国古典小説選 1』 より 「蜀王本紀」 揚雄 明治書院
前漢時代の四川の学者揚雄(ようゆう)が書いたとされる「蜀王本紀(しょくおうほんき)」。戦国秦に征服される以前の古代蜀王国に関して書かれている。
*前漢(紀元前206年~8年)=秦滅亡後の楚漢戦争(項羽との争い)に勝利した劉邦(りゅうほう)によって建てられ、長安を都とした。
*揚雄(前53~後18)=中国前漢末の文学者、哲学者。成都(四川省)の人。四十余歳で都へ出て、その博学と文才を認められ、成帝(せいてい)、哀帝(あいてい)、平帝(へいてい)に仕えた。王莽 (おうもう) にも仕え、『劇秦美新』の文を草して王莽を賛美したともいわれる。
*蜀=中国の地名・国名。現在の四川省、特に成都付近の古称。三国時代の王朝。
**成帝、哀帝、平帝=それぞれ前漢の第11代、12代、13代皇帝。
*王莽(紀元前45年~紀元23年)=古代中国の政治家である。 漢王朝から禅譲(ぜんじょう)を受けて「新」王朝の皇帝となったことで知られる。
*禅譲=帝王がその位を世襲(せしゅう)せず、有徳者に譲ること。
*世襲=特定の地位や職業、財産等を、子孫が代々承継することである。
『新日本古典文学大系97 落栗物語』 松井成教 岩波書店
従一位・右大臣である藤原家孝による文政時代の日本の随筆とされる。
*文政時代=江戸時代後期、第11代将軍徳川家斉(いえなり)治下の文化・文政年間(1804~30)を中心とした時代。略して化政期ともいう。
*「従一位・右大臣」については、以下を参考にしてください。
http://manapedia.jp/text/282
『空への助走 福蜂工業高校運動部』 壁井ユカコ 集英社
福蜂バレー部・高杉潤五はエース争いで三村統に負けて…。
陸上部のヘタレな後輩・柳町が急成長。
原動力は元部長への恋!?
柔道部の顧問と衝突して稽古をサボった長谷。
逃避した先は海。
高校生活最後の3年生たちが交わす熱い誓い。
大人気シリーズ「2.43清陰高校男子バレー部」の著書が贈る青春部活ストーリー。
『ビッグデータと人工知能 可能性と罠を見極める』 西垣通 中公新書
ビッグデータ時代の到来、第三次AI(人工知能)ブームとディープラーニングの登場、さらに進化したAIが2045年に人間の知性を凌駕(りょうが)するというシンギュラリティ予測…。
人間とAIはこれからどこへ向かっていくのか。
本書は基礎情報学にもとづいて現在の動向と論点を明快に整理し分析。
技術万能主義に警鐘(けいしょう)を鳴らし、知識増幅と集合知を駆使することにっよって拓(ひら)かれる未来の可能性を提示する。
*ビッグデータ=インターネットの普及や、コンピュータの処理速度の向上などに伴い生成される、大容量のデジタルデータを指す。
*ディープラーニング=人間が行うタスクをコンピュータに学習させる機械学習の手法の一つ。
**タスク=課された仕事。課題。
*凌駕=他のものを越えてそれ以上になること。
*シンギュラリティ=人工知能が発達し、人間の知性を超えることによって、人間の生活に大きな変化が起こるという概念。
*技術万能主義=どんな種類の社会問題も、技術的手段によって解決することができ、技術進歩によって引き起こされた社会問題もまた、究極的には技術進歩によって克服される、という見解。
*警鐘=
1 火災・洪水などの、警戒を促すために鳴らす鐘。
2 危険を予告し、警戒を促すもの。警告。
『新日本古典文学大系41 続古事談(ぞくこじだん)』 岩波書店
ふるき人の様々な物語。
記録にはない情報や秘話(ひわ)を折り込みつつ叙述(じょじゅつ)される、600を超える話の数々。
天皇・貴族たちの人間的側面を描き、事柄の裏面を穿(うが)ち、古代から中世への架け橋となった説話(せつわ)集。
*秘話=包み隠されて世に知られていない話。
*叙述=(物事の有様を)順を追って(書き)述べること。
*穿つ=物事の本質をうまく的確に言い表す。
**的確=的(まと)をはずれず確かなこと。真相を突いていて正確なこと。
*説話=話。物語。特に、語り伝えられた神話・伝説・民話など。
『脳は美をどう感じるか アートの脳科学』 川畑秀明 ちくま新書
人はなぜ、美しいと思い、感動するのだろうか。
本書は脳科学や心理学における最新の研究をもとに、脳が美をどのように感じるのか、
人にとって芸術はどのような意味があるのかについて論じてゆく。
気鋭(きえい)の脳研究者が、人間に秘められた最大の謎を探求する知的冒険の書。
*気鋭=気力があって、意気込みの鋭(するど)いこと。