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『ダック・コール』 稲見 一良 ハヤカワ文庫
石に鳥の絵を描く不思議な男に河原(かわら)で出会った青年は、微睡む(まどろむ)うち鳥と男たちについての六つの夢を見る―。絶滅(ぜつめつ)する鳥たち、少年のパチンコ名人と中年男の密猟(みつりょう)の冒険、脱獄囚(だつごくしゅう)を追っての山中のマンハント、人と鳥と亀との漂流譚(ひょうりゅうたん)、デコイと少年の友情などを。ブラッドベリの『刺青(いれずみ)の男』にヒントをえた、ハードボイルドと幻想(げんそう)が交差する異色作品集。“まれに見る美しさを持った小説”と絶賛(ぜっさん)された第四回山本周五郎賞受賞作。
*微睡む=
(1)少しの間うとうとする。
(2)眠る。寝入る。
*絶滅=すっかり滅びて絶えること。また、滅ぼし絶やすこと。
*密猟=国際間の協定や法令を無視して陸上の動物を採取すること。
*マンハント=犯人捜査
*譚=物語を語る。また、物語。
*刺青=針・刃物・骨片などで皮膚を刺突(しとつ:突き刺すこと)、切るなどして、そこに墨(すみ)・煤(すす)・朱(しゅ)などの色素を入れ着色し、文様・文字・絵柄などを描く手法、および、その手法を使って描かれたもの。
*ハードボイルド=
(1)第一次大戦後のアメリカ文学に現れた創作態度。現実の冷酷(れいこく)・非情(ひじょう)な事柄を、情緒表現をおさえた簡潔な文体で描写する。
(2)感情をおさえた行動的な主人公の登場する探偵小説の一ジャンル。
『食の人類史 ユーラシアの狩猟・採集、農耕、遊牧』 佐藤 洋一郎 中公新書
人は食べなければ生きていくことはできない。人類の歴史は、糖質(とうしつ)とタンパク質のセットをどうやって確保するかという闘い(たたかい)だった。現在、西洋では「麦とミルク」、東洋では「コメと魚」の組み合わせが一般的だ。だが、日本を例にとっても山菜を多食(たしょく)する採集文化が色濃く残っているように、食の営み(いとなみ)は多様である。本書は、ユーラシア全土で繰り広げられてきた、さまざまな「生業(せいぎょう)」の変遷(へんせん)と集団間の駆け引きを巨細(こさい)に解読(かいどく)する。
*営み=
(1)物事をすること。行為。作業。
(2)生活のためにする仕事。
(3)したく。準備。
(4)神事・仏事を行うこと。
*生業=くらしを立てるための仕事。なりわい。
*変遷=時の流れとともに移り変わること。
*巨細=
(1)大きなことと小さなこと。
(2)細かく詳しいこと。また、そのさま。
*解読=古文書・暗号・古代言語などを読み解くこと。
『菜根譚』 洪 自誠 岩波文庫
「人よく菜根(さいこん)を咬(か)みえば、則ち(すなわち)百事(ひゃくじ:あらゆること)なすべし」。菜根は堅くて筋が多い、これをかみしめてこそ、ものの真の味わいがわかる。中国明代の末期に儒・仏・道の三教(さんぎょう)を兼修(けんしゅう)した洪自誠が、自身の人生体験を基(もと)に、深くかみしめて味わうべき人生の哲理(てつり)を簡潔(かんけつ)な語録(ごろく)の形に著(あらわ)わした。的確な読み下し(よみくだし)、平易(へいい)な訳文。更に多年研究の成果は注と解説にも充分に盛りこまれている。
*三教=中国において、儒教・仏教・道教の三つの宗教を指す。
*兼修=二つ以上のものを同時に並行して学ぶこと。
*哲理=哲学上の道理。人生や世界の本質などに関する奥深い道理。
**哲学=世界や人間についての知恵・原理を探究する学問。
*語録=
(1)儒者・禅僧などの学説・教理に関する言葉を記録したもの。
(2)広く、偉人・有名人などの言葉・短文を集めたもの。
*的確=的(まと)をはずれず確かなこと。真相を突いていて正確なこと。
*読み下し=
(1)初めから終わりまで読むこと。
(2)漢文を訓読すること。
*平易=わかりやすいこと。やさしいこと。
『願いながら、祈りながら』 乾 ルカ 徳間文庫
まるで時の女神が回収し忘れたようだ。北の大地の片隅(かたすみ)に、ぽつんとたたずむ中学校分校には、一年生四人と三年生一人が学んでいた。たった五人でも、自称霊感(れいかん)少女もいれば、嘘つきな少年もいる。そこに赴任(ふにん)してきたのは、まったくやる気のない若い教師。けれど、やがて彼が知ることになる少年の嘘(うそ)の痛ましい理由とは?ときには悩み、傷つきながらも、成長していく五人の、胸を打つ青春前期物語。
*赴任=任地におもむくこと。
**任地=仕事のために居住(住むこと)する土地のこと。
**おもむく=ある場所・方角に向かって行く。
*霊感=
(1)霊的なものを感ずる不思議な感覚。インスピレーション。
(2)神仏の不思議な感応。
*胸を打つ=強く感動させる。心を打つ。
『「里」という思想』 内山 節 新潮選書
世界を席巻(せっけん)したグローバリズムは、「ローカルであること」を次々に解体していった。たどりついた世界の中で、人は実体のある幸福を感じにくくなってきた。競争、発展、開発、科学や技術の進歩、合理的な認識と判断―私たちは今「近代」的なものに取り囲まれて暮らしている。本当に必要なものは手ごたえのある幸福感。そのために、人は「ローカルであること」を見直す必要があるのだ。
*席巻=むしろを巻くように領土を片端から攻め取ること。はげしい勢いで、自分の勢力範囲をひろげること。
**むしろ=藺(い)・藁(わら)・竹・蒲(がま)などの「植物」を編んでつくった敷物(しきもの)。
*グローバリズム=国家を超えて、地球全体を一つの共同体とみる考え方。
*ローカル=
(1)その地方に限定される特有なこと。また、そのさま。風俗・自然・情緒(じょうちょ)などにいう。
**情緒=喜怒哀楽などの様々な感情。
(2)他の語と複合して用い、地方の、地方特有の、また、局地(限られた一定の区域・土地)的・局所(範囲が限られた所)的な、の意を表す。
(3)あるコンピューターと、その入出力チャンネルに直結された端末装置などで構成される利用環境。
『無名草子』 新潮社
好評シリーズが装いを新たに。古語辞典は不要です! 昔男をめぐる珠玉(しゅぎょく)の歌物語の数々が「みやび」な世界を織りなす『伊勢物語』。継母(ぎぼ)にいじめられ、「落窪(おちくぼ)の君」と呼ばれていた女君(おんなぎみ)の波瀾万丈(はらんばんじょう)の運命を描く、平安時代のシンデレラストーリー『落窪物語』。座談(ざだん)形式で、『源氏物語』や『伊勢物語』を論じ小野小町や清少納言や紫式部を批評(ひひょう)する、中世初期の異色評論『無名草子』。
*珠玉=
(1)海から産する玉と、山から産する玉。真珠と宝石。
(2)美しいもの、りっぱなもののたとえ。特に、詩文などのすぐれたものを賞していう。
**賞する=
(1)ほめたたえる
(2)美しいものや趣(おもむき:味わい。面白み。)の深いものを見て楽しむ。鑑賞する。
*みやび=ものの趣を解(かい)し、けだかく、動作なども優美(ゆうび)なこと。
*義母=義理の母。養母、また妻や夫の母など。
*女君=
(1)貴族の息女(身分ある人の娘のこと。)の敬称。姫君。
(2)貴族の妻の敬称。
*波瀾万丈=劇的な変化に富んでいること。
**劇的=劇を見ているように緊張や感動をおぼえるさま。
*座談=
(1)すわって気楽に話し合うこと。
(2)その場だけの話。
*批評=事物の善悪・優劣・是非などについて考え、評価すること。
**優劣=すぐれていることと、おとっていること。
**是非=良い(=是)ことと悪い(=非)こと。
『くちびるに歌を』 中田 永一 小学館文庫
長崎県五島列島のある中学校に、産休に入る音楽教師の代理で「自称ニート」の美人ピアニスト柏木はやってきた。ほどなく合唱部の顧問を受け持つことになるが、彼女に魅せられ、男子生徒の入部が殺到。それまで女子部員しかいなかった合唱部は、練習にまじめに打ち込まない男子と女子の対立が激化する。一方で、柏木先生は、Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)の課題曲「手紙~拝啓十五の君へ~」にちなみ、十五年後の自分に向けて手紙を書くよう、部員たちに宿題を課した。そこには、誰にもいえない、等身大の秘密が綴られていた。青春小説の新たなるスタンダード作品、文庫化!
*拝啓=(つつしんで申し上げます、の意)手紙の初めに書くあいさつの語。
*読後=本などを読んだあと。
*切ない=
(1)(寂しさ・悲しさ・恋しさなどで)胸がしめつけられるような気持ちだ。つらくやるせない。
(2)大切に思っている。深く心を寄せている。
(3)苦しい。肉体的に苦痛だ。
(4)せっぱ詰まった状態である。
(5)生活が苦しい。
『「言葉にできる」は武器になる。』 梅田 悟司 日本経済新聞社出版社
『世界は誰かの仕事でできている。』『この国を、支える人を支えたい。』トップコピーライターが伝授する、言葉と思考の強化書、遂に完成。「人に伝える・動かす」は、多くの人が様々な場面で直面し、悩むテーマ。いかに言葉を磨き上げるか? 誰にでもできる方法論を具体的に解説する本書は、ビジネスコミュニケーションや企画のプレゼンなどの仕事シーンはもちろん、私生活でのアピール、さらには就職・転職活動にも役立つ考え方が満載の一冊。
*コピーライター=商品や企業を宣伝するため、新聞・雑誌・ポスターなどのグラフィック広告、テレビCM、ラジオCM、ウェブサイトやバナー広告などに使用する文言(コピー)を書くことを職業とする人のこと。
『宇治拾遺物語』 角川ソフィア文庫
日本、インド、中国などを舞台に物語が繰り広げられる鎌倉時代の説話集。教訓めいた話もあるものの、「善」「悪」と単純に割り切ることのできないこの世の理不尽(りふじん)やモヤモヤを取り込みながら、ユーモラスに展開していく。総ふりがなつきの原文と現代語訳に、ていねいな解説を付した、宇治拾遺物語入門の決定版!
*説話=人々の間に語り伝えられた話で、神話・伝説・民話などの総称
*理不尽=道理をつくさないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。
『君だけのシネマ』 高田 由紀子 PHP研究所
君の居場所(いばしょ)は君だけが知っている。過干渉(かかんしょう)の母を新潟に残し父とともに佐渡へ転校してきた史織。「風のシネマ」をオープンした祖母やクラスメイトと出会う中で大切なものに気づいていく葛藤(かっとう)と成長の物語。
*過干渉=ある対象に対し、必要以上に干渉すること。
*葛藤=
(1)人と人が互いに譲らず対立し、いがみ合うこと。
(2)心の中に相反する動機・欲求・感情などが存在し、そのいずれをとるか迷うこと。
『高校生と考える希望のための教科書』より「芸術と生きること」 李 禹煥 左右社
お金をめぐる仕組みのゆらぎ、人工知能の発達、細分化(さいぶんか)する働き方……
数年先の未来を描くことさえも困難なように見えても、
「新しい教養」はいまこの瞬間にも生まれ広がりつつある。
どんな研究が、どんな考え方が「新しい潮流(ちょうりゅう)」や「21世紀の常識」になるのか?
これからを生きる若い人の希望のための、
そしてビジネスマンにも現実的に役立つ、
22人のトップランナーによる新しい羅針盤(らしんばん)。
入試問題にも多数出題されている好評シリーズ第4弾。
*細分化=細かく分けること。また、細かく分化すること。
*潮流=
(1)潮の流れ。
(2)海の干満によっておこる海水の流れ。一日に二回ずつ、その流れの方向が逆になる。
(3)時勢の動き。時代の流れ。
*羅針盤=磁石を用いて方角を知る計器。船や飛行機などで用いる。
『噺本大系 第六巻』より「軽口ひやう金房」 東京堂出版
近世の庶民文芸の一つに、短い笑話(しょうわ)を集めた噺本(はなしぼん)がある。各時期によって、様々な呼び方で呼ばれ、形式や体裁(ていさい)、内容や表現などに変化があって一様ではない。しかし一時期の流行ではなく、噺本は笑話集として全期間一貫して出版された。発表された原形のままでも容易に理解され、愛好される内容が多くある点でも特異な存在である。
*笑話=わらいばなし。
*噺本=江戸時代の庶民文芸の一種で,短い笑話を集めた本。
*体裁=
(1)外から見た感じ・ようす。外見。外観。
(2)世間の人の目にうつる自分のかっこう。世間体。みえ。
(3)それらしい形式。
(4)相手を喜ばせるような振る舞いや口先だけの言葉。
『戦国策』 劉向/編 講談社学術文庫
前漢(ぜんかん)末の学者劉向(りゅうきょう)が、皇帝の書庫にあった「国策」「国事」などの竹簡(ちくかん)を編んで作った『戦国策』。三三編四八六章の長編を、人物編、術策編、弁説(べんぜつ)編の三編百章に再構成して平易(へいい)に解説。陰謀(いんぼう)が渦(うず)巻く戦国乱世(らんせ)を生き抜く巧智(こうち)・奸智(かんち)や説得の技法とは何か。「虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)」「漁夫の利」「先(ま)ず隗(かい)より始めよ」など故事(こじ)名言の由来と古代中国の奥深い知恵を学ぶ。
*前漢=中国古代の王朝。秦(しん)の滅亡後、前202年、楚(そ)の項羽(こうう)を破った漢王劉邦(りゅうほう)(高祖)が建国。都は長安。
*国策=国家の政策。
*国事=国家に直接関係する事柄。特に、政治にかかわる事柄。
*竹簡=中国古代の書写材料の一つ。紙が発明される以前に用いられたもので,竹を細い短冊形に削り,火にあぶって油抜きし,文字を書いた。普通の形式は長さ 25cm,幅 3cmぐらいである。
*術策=はかりごと。計略。謀略。策謀。
*弁説=物事の道理(=物事の筋道)を説き明かすこと。
*陰謀=ひそかにたくらむ悪いはかりごと。
*巧智=物事を運ぶ才知にすぐれていること。
*奸智=悪いことを考えだす知恵。悪知恵。
*虎の威を借る狐=権勢を持つ者に頼って、威張る小者のこと。
*漁夫の利=当事者同士が争っているうちに、第三者が何の苦労もなく利益をさらうことのたとえ。
*先ず隗より始めよ=
(1)遠大な事をするには、手近なことから始めよ。
(2)転じて、事を始めるには、まず自分自身が着手せよ。
*故事
(1)昔あった事柄。古い事。
(2)昔から伝わってきている、いわれのある事柄。古くからの由緒(ゆいしょ)のあること。
**由緒
(1)物事の起こり。また、今に至るまでのいきさつ。いわれ。
(2)現在に至るまでのりっぱな歴史。来歴。
『流星と稲妻』 落合 由佳 講談社
熊のような巨体の阿久津善太は、授業で、もう一人の剣道経験者、蓮見宝と模範(もはん)試合をすることになるが、小柄でおどおどしている宝に、あざやかに「抜き胴」を決められてしまった。クラスの中では「根性なしとビビり」と、からかわれている善太と宝は、剣を交えるうちに互いをかけがえのないライバルとして意識するようになっていく。
*模範試合=勝敗に重きをおかず、そのスポーツの紹介・普及などのために、模範として行う試合。
*抜き胴=相手の面打ちなどの打ち込みに対して、それをかわしながら右胴へ打ち抜くこと。
『知の体力』 永田 和宏 新潮新書
「答えは必ずある」などと思ってはいけない。“勉強”で染みついた呪縛(じゅばく)を解くことが、「知の体力」に目覚める第一歩になる。「質問からすべては始まる」「孤独(こどく)になる時間を持て」「自分で自分を評価しない」「言葉にできないことの大切さとは」―。細胞生物学者にして日本を代表する歌人でもある著者が、これから学ぶ人、一生学び続けたい人たちにやさしく語りかける。自力で生きぬくための本物の「知」の鍛錬(たんれん)法。
*呪縛=まじないをかけて動けなくすること。心理的な強制によって、人の自由を束縛すること。
*鍛錬=
(1)金属を打ってきたえること。
(2)きびしい訓練や修養を積んで、技芸や心身を強くきたえること。
**修養=徳性(=道徳心。道徳意識)をみがき、人格を高めること。
『室町殿物語』 楢村 長教 東洋文庫
「室町殿」とは足利将軍邸のこと。義晴(よしはる)、義輝(よしてる)、義昭(よしあき)の3人の将軍と信長・秀吉の時代、裏切り、夜討ち(ようち)に明け暮れ、喧嘩(けんか)、誘拐(ゆうかい)、強盗(ごうとう)が跡を絶たない動乱期の世相(せそう)を、史実(しじつ)と虚構(きょこう)が渾然(こんぜん)となった挿話(そうわ)によって活写(かっしゃ)する。
*義晴=足利義晴。室町幕府12代将軍。
*義輝=足利義輝。室町幕府13代将軍。12代義晴の長男。
*義昭=足利義昭。室町幕府15代将軍。室町幕府最後の将軍。12代将軍義晴の二男。
*夜討ち=
(1)夜、不意に敵を攻撃すること。夜襲。夜駆け。
(2)新聞記者などが、深夜、予告なしに取材先に出向くこと。
(3)夜、人家に押し入って財宝を盗むこと。また、その人。
*動乱=世の中が動揺し、乱れること。また、その乱れ。暴動などのさわぎ。
*世相=世の中のありさま。社会のようす。
*史実=歴史上の事実。
*虚構=
(1)事実でないことを事実らしく作り上げること。また、作り上げられたもの。作りごと。
(2)文芸作品を書くにあたって、作者の想像力により、実際にはないことを現実にあったことのように真実味をもたせて書くこと。
*渾然=
(1)すべてがとけ合って区別がないさま。
(2)性質が円満で欠点のないさま
*挿話=物語や事件の本筋の間に挿入される短いまとまった話。
*活写=物事のありさまを生き生きと描き出すこと。
『都市と地方をかきまぜる「食べる通信」の奇跡』 高橋 博之 光文社新書
東北の農業や漁業の現場を取材したタブロイド紙と、野菜や魚などの生産物をセットで届ける新しいタイプのメディア「東北食べる通信」。その名物編集長が、「都市」と「地方」を切り口に、これからの農業・漁業、地域経済、消費のあり方、情報社会における生き方までを語り尽くす―。
*タブロイド紙=新聞・雑誌などで、日本の一般的な新聞紙の半ページ分の大きさの型。
元々このサイズを採用していた新聞がセンセーショナルな事件報道やゴシップ報道などに力を入れる大衆紙であったことから、転じて大衆紙の報道スタイルを指す語としても用いられる。
『兵隊宿』より「虚無僧」 竹西 寛子 講談社文芸文庫
乗船直前、自分の家に泊った三人の出征(しゅっせい)将校の姿に、未知の大人たちの世界を知り微妙に変わる少年の心の襞(ひだ)。川端康成文学賞受賞「兵隊宿」と、「少年の島」「流線的」「緋鯉(ひごい)」「虚無僧(こむそう)」ほか共通の主人公による九つの短篇(たんぺん)群。『往還(おうかん)の記』『式子内親王(しきしないしんのう)・永福門院(えいふくもんいん)』等、日本の古典を材に優れた評論を持つ著者の『儀式』『鶴』に続く代表的名篇。
*出征=軍隊に加わって戦地に行くこと。
*襞=
(1)衣服や布地などにつけた細長い折り目。
(2)衣服のひだのように見えるもの。精神的なものについてもいう。
(3)キノコの傘の裏側にあるしわ。
*緋鯉=コイの一品種。体色は赤や赤黄色、斑紋のあるものなどさまざま。
*虚無僧=尺八を吹きながら家々を回り、托鉢(たくはつ)を受ける僧。
**托鉢=僧尼(そうに=僧とあま。)修行のため、経を唱えながら各戸の前に立ち、食物や金銭を鉢に受けて回ること。
*短篇=詩歌・小説・映画などの短い作品。
*往還=
(1)道を行き来すること。往復。往来。
(2)人などが行き来するための道。主要な道路。街道。
*式子内親王=平安末期・鎌倉初期の女流歌人。後白河天皇の第3皇女。
*永福門院=鎌倉時代後期の女流歌人。名はしょう子 (しょうし) 。
『40億年、いのちの旅』 伊藤 明夫 岩波ジュニア新書
40億年に及ぶとされる、地球における生命の歴史。共通の祖先(そせん)から進化した生きものたちは、多様でありながら共通点もあわせ持っています。いのちとは何か?いのちはどのようにして生まれたのか?どのように考えられてきたのか?その歴史をひもときながら、私たちの来た道と、これから行く道を、探ってみましょう。
*祖先=
(1)一族・一家の初代にあたる人。また、初代以来、先代までの人々。先祖。
(2)現在のものに発達してきた、もとのもの。
*紐解く(ひもとく)=
(1)〔巻物のひもをほどいて広げる意〕 書物を読む。ひもどく。
(2)衣の下紐(したひも)を解く。男女が共寝する。
(3)つぼみが開く。
『地に滾(たぎ)る』 あさの あつこ 祥伝社
藩政(はんせい)の刷新(さっしん)を願い脱藩(だっぱん)した天羽藩上士(じょうし)の子・伊吹藤士郎は、人が行き交い、物が溢(あふ)れる江戸の大地を踏み締める―。人生に漕(こ)ぎ出した武士の子は、貧し、迷い、慟哭(どうこく)しながら、自由に生きる素晴らしさを知る。著者渾身(こんしん)、鮮烈(せんれつ)な青春時代小説!
*藩政=藩主がその領地内で行う政治。
*刷新=よくない状態を除き去って、全く新しくすること。
*脱藩=江戸時代、武士が藩籍(はんせき:藩の領土と人民)を抜けて浪人(ろうにん)になること。
*上士=武士の身分のひとつ。 江戸時代の上級藩士。
*漕ぎ出す=舟を漕いで出る。
*慟哭=悲しみのあまり、声をあげて泣くこと。
*渾身=からだ全体。全身。満身。
*鮮烈=あざやかではっきりしていること。また、そのさま。
『孟子』 岩波文庫
古来、孟子(もうし)は孔子(こうし)の思想をつぐ賢人(けんじん)として知られている。本書は、在来(ざいらい)の孟子解釈にこだわらず、戦国時代に生きた彼の姿を描きながら、「王道の道は民を保(やす)んずることにあり」という論旨(ろんし)をはじめとして、その思想のすべてを新たな観点からわかりやすく紹介する。人道主義者としての孟子の全貌(ぜんぼう)を達意(たつい)な筆で綴(つづ)った労作である。
*賢人=聖人に次いで徳のある人。また、かしこい人。
*在来=これまで普通にあったこと。ありきたり。
*保んずる=安心させる。
*論旨=論文・議論の主旨。議論の筋道。
*人道主義=人間性を重んじ、人間愛を実践し、併せて人類の福祉向上を目指す立場。
*全貌=全体の姿。物事の全体のありさま。
*達意=自分の考えが十分に相手に理解されるように表現すること。
*綴る=
(1)欠けたり破れたりしたところをつぎ合わせる。また、とじる。とじ合わせる。
(2)言葉をつらねて詩歌や文章を作る。
(3)仮名やアルファベットなどを並べて単語を書き表す。
『土佐日記』 紀貫之 角川ソフィア文庫
平安期の大歌人、紀貫之(きのつらゆき)が侍女(じじょ)になりすまし、帰京の旅をかな文字で綴(つづ)った紀行文学の名作。国司(こくし)の任期を終えて京へ戻る船旅は長く苦しい日々の連続であった。土佐の人々に温かく見送られ出発したものの、天候不順で船はなかなか進まない。おまけに楫取(かんどり)はくせ者。海賊(かいぞく)にも狙われる。また折にふれ、土佐で亡くした娘を想い悲嘆(ひたん)にくれる。鬱々(うつうつ)としながらも歌を詠(よ)み合い、ひたすら都を目指す一行の姿が生き生きとよみがえる。
*侍女=貴人(きじん:地位や家柄が高い人)などのそばに仕える女性。
*国司=奈良・平安時代に中央から地方支配のために送られた役人。今の県知事にあたる。
*楫取=平安・鎌倉時代に、船舶運航全般の責任者。近世の船頭(せんどう)に相当する。
*海賊=海上を横行し、往来の船などを襲い、財貨を脅し取る盗賊。
*悲嘆=かなしみなげくこと。
*鬱々=
(1)心がふさいで晴れ晴れしないさま。
(2)草木の生い茂るさま。
*詠む=和歌・俳句などを作る。ある事柄を歌や句として表現する。
『伊曾保物語』 岩波文庫
仮名草子(かなぞうし)。元和年間(1615‐24)刊行。3巻。《イソップ物語》の翻訳であるが、全部で94話。最初の30話はイソップの逸話(いつわ)、のちの64話が動物の寓話(ぐうわ)である。イソップ物語は、1590年(天正18)スペインの宣教師(せんきょうし)バリニャーノによって日本にもたらされ、九州天草で「エソポのハブラス」として日本語訳ローマ字で印刷された。これが、日本における最初の西洋文学の翻訳本である。この元和(げんな)の書は、それとは異なって古活字版日本字で翻訳されたものである。
*仮名草子=江戸初期に行われた小説類の呼称(こしょう)。婦人・子供向けに、平易(へいい)な仮名文で書かれた、啓蒙娯楽(けいもうごらく)を主としたものが多い。
**呼称=名づけてそう呼ぶこと。その呼び名。
*逸話=その人についての、あまり知られていない興味深い話。エピソード。
*寓話=擬人化した動物などを主人公に、教訓や風刺を織りこんだ物語。
**風刺=それとなくそしる(=人のことを悪く言う)こと。また、遠まわしに社会・人物の欠陥などを批評(=よい点・悪い点などを指摘して、価値を決めること)すること。
*元和=年号(1615.7.13~1624.2.30)。慶長の後、寛永の前。後水尾天皇の代。
『孫子』 岩波文庫
『孫子』13篇(へん)は、中国最古の兵書(へいしょ)である。そこには、現実的な戦術が深い思想的裏づけを得て、戦争一般、さらには人生の問題として、広い視野の中に組みこまれている。竹簡(ちくかん)の新資料との照合も経て、またさらに読みやすくなった新訂版。原文・読み下し文・現代語訳に平易(へいい)な注を加え、巻末には重要語句索引を付した。
*兵書=戦争などにおいて兵の用い方を説いた書物。 主な兵書として古代中国の孫子(そんし)、呉子(ごし)、六韜(りくとう)などが知られる。
*竹簡=紙が普及する以前に,古代中国で書写に用いられた長さ20〜30cm,幅1〜2cm程度の竹片。簡はもともと竹を薄く細長い形に切ったもので,同様の木片を意味する牘(とく)とともに簡牘ともいわれた。
*平易=やさしいこと。たやすく理解できること。また、そのさま。
『知の体力』 永田 和宏 新潮新書
「答えは必ずある」などと思ってはいけない。“勉強”で染みついた呪縛(じゅばく)を解くことが、「知の体力」に目覚める第一歩になる。「質問からすべては始まる」「孤独になる時間を持て」「自分で自分を評価しない」「言葉にできないことの大切さとは」―。細胞生物学者にして日本を代表する歌人でもある著者が、これから学ぶ人、一生学び続けたい人たちにやさしく語りかける。自力で生きぬくための本物の「知」の鍛錬(たんれん)法。
*呪縛=まじないをかけて動けなくすること。心理的な強制によって、人の自由を束縛すること。
*鍛錬=
(1)金属を打ってきたえること。
(2)きびしい訓練や修養を積んで、技芸や心身を強くきたえること。
**修養=徳性(=道徳心。道徳意識)をみがき、人格を高めること。
『動く倫理学を展開する』 小林 道憲 ミネルヴァ書房
内に混沌(こんとん)を蔵(ぞう)している〈動く社会〉の倫理(りんり)を考え、新たな倫理学を構築(こうちく)する。生成変化する社会では、われわれの行為の意味や価値も目まぐるしく変動する。われわれの行為は、変化する状況とともに変わり、また、状況を変化させてもいくことができるのである。生成の中で行為を考え、行為の中で生成を考えながら、その叙述(じょじゅつ)の過程に東西の倫理思想を位置づけ、行為の意味と価値を考察する〈動態倫理学〉の展開。
*混沌=
(1)天地創造の神話で、天と地がまだ分かれず、まじり合っている状態。
(2)入りまじって区別がつかず、はっきりしないさま。
*倫理=人間生活の秩序つまり人倫(じんりん)の中で踏み行うべき規範の筋道(の立て方)
**人倫=
(1)人と人との間柄・秩序関係。君臣(=主君と臣下)・父子・夫婦などの間の秩序。
(2)人として守るべき道。人道。
(3)ひと。人類。人間一般。
*蔵する=
(1)おさめる。所蔵する。
(2)中に含みもつ。
*生成=
(1)生じること。また、生じさせること。
(2)物がその状態を変化させて他の物となること。転化
*行為=
(1)個人がある意志・目的を持って意識的にするおこない。行動。ふるまい。
(2)自由な意志に基づいて選択され、実行された身体的動作で道徳的評価の対象となるもの。
(3)法律上の効果を発生させる原因となる、人の自発的な意思活動。
*叙述=物事について順を追って述べること。また、その述べたもの。
『石の来歴』 奥 泉光 講談社文芸文庫
「石には宇宙が刻印されている」レイテで戦友から聞かされた言葉によって、岩石に魅(み)せられた男。戦後、彼に訪れる苦難(くなん)とは!? 現在と過去、夢と現実が交錯(こうさく)するなかで、妻は狂気にいざなわれ、子は死にもてあそばれる。華麗(かれい)にしてペーソス溢(あふ)れる文体で、時と心との織りなす迷宮(めいきゅう)を描ききる、気鋭(きえい)の芥川賞受賞作。
*レイテ=レイテ沖海戦。1944年(昭和19)10月、太平洋戦争における米軍のフィリピン奪回作戦に伴い生起(せいき)した一連の日米の海空戦。この海戦で日本海軍は残存大型軍艦の大半を喪失(そうしつ)し、以後組織的な作戦能力を失った。
*いざなう=さそう。すすめる。さそい出す。
*もてあそぶ=
(1)手に持って遊ぶ。いじくる。
(2)まじめに扱うべきものをおもちゃにする。
*華麗=はなやかで美しいこと。はでやかなこと。
*ペーソス=もの悲しい情緒。哀愁(あいしゅう)。ユーモアの対。
**情緒=喜び,悲しみ,怒り,恐れなどによって代表される感情群。
*迷宮=
(1)中に入ると容易に出口がわからず迷うようにつくってある建物。
(2)複雑に入り組んでいてなかなか解明できない事柄のたとえ。また特に、手がかりがなく解決の見通しが立たない犯罪事件。
*気鋭=気力があって、意気込みが鋭いこと。また、そのさま。
『歌説話の世界』 馬場 あき子 講談社
本当に勝(すぐ)れた歌とはどういうものをいうのか平安初期から中世にかけて、多くの歌人が記憶に残していった歌説話を中心に、歌とは何だったのかを考える馬場あき子渾身(こんしん)の書。
*歌説話=和歌にまつわる説話を集成した、物語文学の総称。
**説話=話。物語。特に、語り伝えられた神話・伝説・民話など。
*渾身=からだ全体。全身。満身。
『数学の想像力』 加藤 文元 筑摩選書
数学は音楽に似ている。論理と感性、理性と直観等、対立するもののように思われがちだが、音楽も数学も古来、天上へつづくかのような調和の美しさで人を魅了(みりょう)してきた。ところが数学者たちはやがて気づく。数の世界に潜む見えない数、無限、そして緻密(ちみつ)な論理が孕(はら)むパラドクスの深淵(しんえん)。しかしそこに、数学が自由に飛翔(ひしょう)するための契機(けいき)があった―。古代文明から現代まで四千年にわたる数学の歴史をたどり、人間にとって正しさとは何かを問いなおす。
*魅了=すっかり相手の心を引きつけて夢中にさせてしまうこと。
*緻密=
(1)きめ・細工が細かいこと。
(2)細かい所まで行きとどいていること。
*孕む=
(1)胎内に子を宿す。妊娠する。
(2)その中に含み持つ。
(3)穂が出ようとしてふくらむ。
*深淵=
(1)深いふち。深潭 (しんたん) 。
(2)奥深く、底知れないこと。
*飛翔=空高く飛びめぐること。
『ホームグラウンド』 はらだ みずき 角川文庫
建設会社に勤める圭介は、広大な休耕地(きゅうこうち)をもつ祖父の雄蔵に土地の有効利用を持ちかけていた。しかし、脳卒中から快復(かいふく)した雄蔵は圭介の提案を断ると、自分の命を救ってくれた少年について語り、荒れ果てた土地をひとり耕し始める。芝生の広場をつくる、という老人の夢に巻き込まれていく圭介は、両親と祖父母の確執(かくしつ)の真実を知り、迷いのあった人生の舵(かじ)を切る。愛しい人のために今を変えようと奔走(ほんそう)する、家族の絆(きづな)の物語。
*休耕地=水田として機能していない田畑のこと。
*確執=自分の意見を強く主張してゆずらないこと。またそこから起こる争い。
*舵を切る=船の舵を操り進行方向を変える。「切る」は、この場合、乗り物の進行方向を変えることを意味する。また、船の操作から転じて企業などの組織において方針を大幅に変更する意味でも用いられる。ちなみに「舵を取る」は物事を営み進めること。
**舵=船の進行方向を定める装置。板状で、多くは船尾に取り付けられる。
*奔走=かけ回って、物事がうまく運ぶように努力すること。
『瑞穂の国うた』 大岡 信 新潮文庫
大きな節目を皆でいっせいに迎える、おごそかでめでたいお正月。日本人の美意識に深く根差した桜の花。夏にかかせぬ青空に響く蜩(ひぐらし)の声。実りの秋に詠(よ)まれた恋。孤独な心に滴(したた)る酒―。詩情あふれる言葉で書きとめられた、時を経ても変わることのない日本人の心、そして芭蕉、子規、漱石、虚子(きょし)についての珠玉(しゅぎょく)の論考(ろんこう)。
*蜩=カメムシ目セミ科に属する昆虫。
*詠む=和歌・俳句などを作る。ある事柄を歌や句として表現する。
*滴る=
(1)水などが、しずくになって垂れ落ちる。
(2)美しさや鮮やかさがあふれるばかりに満ちている。
*珠玉=真珠や宝石。比喩的に、尊いもの、美しいもの、賞すべきもの。
*論考=あるテーマについて論じ考究した文章。論文。