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『AI vs. 教科書が読めない子どもたち』 新井 紀子 東洋経済新報社
東ロボくんは東大には入れなかった。AIの限界――。しかし、「彼」はMARCHクラスには楽勝で合格していた!これが意味することとはなにか?AIは何を得意とし、何を苦手とするのか?AI楽観論者は、人間とAIが補完し合い共存するシナリオを描く。しかし、東ロボくんの実験と同時に行なわれた全国2万5000人を対象にした読解力調査では恐るべき実態が判明する。AIの限界が示される一方で、これからの危機はむしろ人間側の教育にあることが示され、その行く着く先は最悪の恐慌(きょうこう)だという。では、最悪のシナリオを避けるのはどうしたらいいのか? 最終章では教育に関する専門家でもある新井先生の提言が語られる。
*楽観論者
→楽観主義=世界や人生の価値や意義を究極的には肯定的に認める立場をいい、日常の用語としては、ものごとや事態のなりゆきをすべて良い方向に考える心理的傾向をいう。楽天主義。
*恐慌=
(1)おそれあわてること。
(2)生産過剰などの原因により、景気が一挙に後退する現象。
*提言=自分の考えや意見を出すこと。また、その考えや意見。
『古今著聞集』 橘 成季 新潮社
鎌倉中期の説話集。20巻。橘成季(なりすえ)作。1254年成立。序跋(じょばつ)をおき、神祇(じんぎ)、釈教(しゃっきょう)、政道忠臣(せいどうちゅうしん)、公事(くじ)、文学、また博奕(ばくえき)、偸盗(ちゅうとう)や闘諍(とうじょう)、興言利口(きょうげんりこう)(笑話)など30編に分かち、約700話の説話を分類配列した組織的構成をもつ説話集。序では《宇治大納言物語》(散逸:さんいつ)《江談抄》にならったものとしている。才芸にかかわる説話も多く、王朝思慕(おうちょうしぼ)の傾向が強いが、地方や庶民の生活の実相(じっそう)を示す説話もあり、大きな魅力となっている。
*序跋=書物のはしがきとあとがき。
*神祇=天の神と地の神。
*釈教=
(1)釈迦(しゃか)の教え。仏教のこと。
(2)和歌・連歌・俳諧で、仏教に関係のある題材を詠(よ)んだ歌や句。
*政道=
(1)国を治めること。また、政治のしかた。
(2)上に立って取り締まること。監督。また、処罰。仕置き。
(3)禁止すること。制止すること。
*忠臣=
(1)まごころを尽くして主君に仕える臣下(=君主に仕える者)。
(2)内臣(ないしん→説明があったほうがいいかな?と確認してみましたが、さらにややこしくなりそうでしたので、やめます。)を改め称したもの。
*公事=
(1)公務。
(2)朝廷の政務・儀式。
(3)中世、年貢以外の雑税・夫役(ぶやく) の総称。
(4)訴訟およびその審理・裁判。
*博奕=双六(すごろく)・囲碁など、勝負を争う遊戯の総称。また、金品をかけて行う勝負事。ばくち。
*偸盗=人のものを盗むこと。また、その人。ぬすびと。
*闘諍=戦い争うこと。あらそい。いさかい。
*興言利口=即興の言葉と巧みな言い回し。
**即興=
(1)その場で起こる興味。
(2)その場の感興(=物に感じて興がわくこと。その面白み。)を即座に詩歌や音楽などに作ること。
*散逸=(まとまっていた書物・文献などが)散りうせること。
*思慕=思い慕うこと。恋しく思うこと。
*実相=
(1)実際の有様。実際の事情。
(2)仏教。すべてのものの、生滅変化する仮のすがたの奥にある真実のすがた。
『木曜日にはココアを』 青山 美智子 宝島社
僕が働く喫茶店(きっさてん)には、不思議な常連(じょうれん)さんがいる。必ず木曜日に来て、同じ席でココアを頼み、エアメールを書く。僕は、その女性を「ココアさん」と呼んでいる。ある木曜日、いつものようにやって来たココアさんは、しかし手紙を書かずに俯(うつむ)いている。心配に思っていると、ココアさんは、ぽろりと涙をこぼしたのだった。主夫の旦那(だんな)の代わりに初めて息子のお弁当を作ることになったキャリアウーマン。厳しいお局(つぼね)先生のいる幼稚園で働く新米(しんまい)先生。誰にも認められなくても、自分の好きな絵を描き続ける女の子。銀行を辞めて、サンドイッチ屋をシドニーに開業した男性。人知れず頑張っている人たちを応援する、一杯のココアから始まる温かい12色の物語。
*喫茶店=コーヒー・紅茶・菓子(あるいは軽食)を客に供する飲食店。
*常連=
(1)その興行場(こうぎょうじょう)・遊戯場(ゆうぎじょう)・飲食店などに、いつも来る客。常客。
(2)いつも連れだって一緒に行動する仲間。
**興行場=映画、演劇、音楽、スポーツ、演芸、見せ物を公衆に見せ、または聞かせる施設。
**遊戯場=パチンコ・ビリヤード・ボウリングなどの遊技を行うための施設。
*俯く=首を少し曲げて頭をたれる。顔を伏せる。
*旦那=
(1)布施(=他人に施し与えること)。
(2)布施をする人を寺や僧の側からいう語。
(3)家人・奉公人などが主人を敬っていう語。特に商家で使用人が主人を呼ぶ語。
(4)妻が夫をいう語。現代では、主に他人に対して自分の夫をいう。また、他人の夫をいう語。
(5)商人などがひいきにしてくれる男の客を呼ぶ語。また、俗に目上の男性を呼ぶ語。
**奉公人=他人の家に召し使われている人。
*お局=俗に、職場で、勤続年数が長く、特に同性の同僚に対して力をもっている女性のこと。
『2045年問題 コンピュータが人類を超える日』 松田 卓也 廣済堂新書
2045年にコンピュータの能力が人類を超えるという説がある。実際に、近年のコンピュータの進化はその説に沿っており、またいま欧米では人工知能開発に一層(いっそう)の拍車(はくしゃ)がかかっている。意識を備えたコンピュータが人類を支配するというSF映画の世界が、現実になるかもしれないのだ。コンピュータと人類の未来を展望する。
*拍車がかかる=事の成り行きが一段と速くなる。物事の進行に一段と力が加わる。
*展望
(1)遠くまで見渡すこと。また、そのながめ。見晴らし。
(2)社会の動き、人生の行く末などを見渡すこと。見通すこと。見通し。
『人間の偏見 動物の言い分』 高槻 成紀 イースト・プレス
タヌキは”まぬけ”で、キツネは”ずるい”?
そのイメージにはワケがあった!
人間が持つ「動物のステレオタイプ」はどこからきたのか。
生態学者がひもとく「人と動物の関係」
言葉、歴史、生態、民話・伝承・……・動物へのイメージの起源と変遷(へんせん)がわかる!
*ステレオタイプ=
(1)印刷で用いる鉛版。ステロタイプ。
(2)行動や考え方が、固定的・画一的(かくいつてき)であり、新鮮味のないこと。紋切り型。ステロタイプ。
**画一的=何もかも一様で、個性や特徴のないさま。
**紋切り型=
(1)紋形を切り抜くための型。
(2)きまりきった型。かたどおりで新味(しんみ)のないこと。
***新味=今までにない新しい味わいや趣。新鮮み。あたらしみ。
*ひもとく=
(1)書物を開く。本を読む。
(2)書物などで調べて真実を明らかにする。
(3)衣服の紐(ひも)、特に、下紐を解く。
*変遷=時の流れとともに移り変わること。
『ペンギンは空を見上げる』 八重野 統摩 東京創元社
将来、NASAのエンジニアになりたい小学六年生の佐倉ハルくんは、風船宇宙撮影を目指しています。できる限り大人の力を借りず、自分だけの力で。そんなことくらいできないようでは、NASAのエンジニアになんて到底(とうてい)なれないから、と。意地っ張りな性格もあってクラスでは孤立(こりつ)、家に帰っても両親とぎくしゃくし、それでもひたすらひとりで壮大(そうだい)な目標と向き合い続けるハルくんの前にある日、金髪の転校生の女の子が現れて…。ハルくんの、夢と努力の物語。奮闘(ふんとう)するこの少年を、きっと応援したくなるはずです―読み終えたあとは、もっと。
*NASA=米国航空宇宙局。1958年に設立された政府機関。アポロ計画、スペースシャトル計画などを達成し、国際宇宙ステーションの開発にも参画(さんかく)している。ワシントン特別区に本部があるほか、各地にジョンソン宇宙センターやケネディ宇宙センターなどの施設をもつ。
**参画=事業・政策などの計画に加わること。
*到底=
(1)どうやってみても。どうしても。
(2)つまるところ。つまり。
*孤立=
(1)一つまたは一人だけ他から離れて、つながりや助けのないこと。
(2)対立するものがないこと。
*ぎくしゃく=話し方や動作、また、物事の関係などが円滑(えんかつ)でないさま。
**円滑=
(1)物事が滞(とどこお)らず、すらすら運ぶこと。また、そのさま。
(2)かどばらず滑(なめ)らかなこと。また、そのさま。
*壮大=さかんで(大きくて)立派なこと。
*奮闘=勇気をふるって戦うこと。奮戦。
『正法眼蔵随聞記』 ちくま学芸文庫
日本仏教の巨星にして曹洞宗の開祖・道元禅師に影の形に添うごとく参侍(さんじ)し、のち永平二世を嗣(つ)いだ懐弉(えじょう)禅師が随侍(ずいじ)当初四年間の師の教えを、聞くにしたがって書きとめたものが『正法眼蔵随聞記』である。道元の人と思想、主著『正法眼蔵』を理解するうえでの最良の入門書でもある。本書は、最も信頼のおける写本である長円寺本をもとに厳密(げんみつ)な校訂(こうてい)を施(ほどこ)し、詳細(しょうさい)な注、わかりやすく正確な訳を付した、他の追随(ついずい)を許さない決定版である。巻末に「道元・その人と思想」(増谷文雄)を付す。
*巨星=直径が大きく絶対光度の明るい星。(この文章内では例えです。)
*参侍=師の傍(そば)に仕えて参学すること。
**師=
(1)学問・技芸を教授する人。師匠。先生。「師の教え」
(2)僧・神父・牧師などを敬っていう語。
*永平二世=道元禅師が永平寺を開いたが、そのあと(=二代目)をついだということ。
*嗣ぐ=あとをうけつぐ。あとつぎ。
*懐弉禅師=鎌倉時代の曹洞宗の僧。永平寺第2世。
*随侍=尊い人のそばにいてつかえること。
*校訂=書物の本文を、異本(いほん)と照合(しょうごう)したり語学的に検討したりして、よりよい形に訂正すること。
**異本=元来同一の書物であるが、伝写(でんしゃ)などの事情によって、文字や組織において多少異なりを生じている本のこと。
***伝写=書物などを次々に書き写してあとに伝えること。
**照合=双方を照らし合わせて、正しいか否かを確かめること。
*施す=
(1)その働きを及ぼして、影響・効果があるように仕向ける。
(2)恵み与える。
(3)広く及ぼす。
*詳細=細部に至るまでくわしいこと。また、そのさま。
『芸術とは何か 千住博が答える147の質問』 千住 博 祥伝社新書
芸術とは何か、人間とは何か―このストレートで根源的(こんげんてき)な問いに答えたのが、本書です。「絵画に余白は必要か?」「作品の価格はどう決まるか?」「インターネットは芸術をどう変えたか?」「芸術家は才能か技術か?」「人間はなぜ絵画を描くのか?」など147の質問に、画家・千住博がていねいに答えます。また、「究極(きゅうきょく)の日本画5作品」「究極の西洋画5作品」などをカラーで紹介、「美」を楽しみながら、その本質に迫(せま)ります。
*根源的=ある物事を成立させる一番もとのものであるさま。 大もとであるさま。
*究極=物事をつきつめ、きわめること。また、その最後の到達点。
*迫る=
(1)少しずつ、上方・前方へ移動する。
(2)催促する。急がせる。
**催促¬=物事を早くするようにうながす(=急がす。そうするように勧める。)こと。
『甲子夜話』 松浦 静山 ワイド版東洋文庫
平戸藩主松浦静山(まつらせいざん)の随筆。1821年(文政4)、静山62歳の11月甲子(きのえね)の日、静山邸を訪れていた親友林述斎(はやしじゅっさい)のすすめによって、その夜から起筆(きひつ)したのが表題の所以(ゆえん)である。1年後20巻ほどになったところで一書(いっしょ)にまとめることを志し(こころざし)、序文(じょぶん)等も選び、以後没する直前まで書きついで正編100巻、続編100巻、三編78巻という膨大(ぼうだい)な著述(ちょじゅつ)となった。内容は武人(ぶじん)でありまた趣味人であった著者を反映して、近世初期からの武辺咄(ぶへんばなし)や政治談に関する聞書(ききがき)風のものから、世相風俗(せそうふうぞく)に関する実見談(じっけんだん)、さらには天変地妖(てんぺんちよう)に至るまで精力的にあつめられている。
*甲子=干支(えと)の1番目。かっし、こうし、とも読む。
*起筆=文章を書きはじめること。筆を起こすこと。
*所以=いわれ。わけ。理由。
*著述=書物を書き著すこと。また、その書き著した物。
*武辺咄=武道に関する体験などを内容とする咄(はなし)で,戦国時代に大名に仕える御伽衆(おとしゅう)が主としてこれをおこなった。
**御伽衆=戦国~江戸時代、主君のそば近くにあって話相手をする役。御咄 (はなし)衆ともいう。
*聞書=人から聞いて、その内容を書きとめること。また、そのようにして書いたもの。
*世相=世の中のありさま・風潮。
*風俗=衣・食・住や行事など、その社会集団の生活の上のさまざまな仕方やしきたり。その有様。
*実見=その場に居合わせて、実際にそのものを見ること。
*天変地妖=天空に起こる変動と地上に起こる変異。天地の間に起こる自然の異変。風、雨、雷、日食、月食、彗星(すいせい)や地震、洪水など。
『生きること学ぶこと』 広中 平祐 集英社文庫
学問の愉(たの)しさ、喜びとは何か。そして、創造することの愉しさ、喜びとは―。フィールズ賞に輝く世界的数学者が自らの半生(はんせい)を振り返りながら、父母や友人のこと、数学へ没頭(ぼっとう)していった学生時代、そして失敗と挫折(ざせつ)から世紀の難問「特異点解消」の定理を完成させるまでのすべてを、飾(かざ)らない言葉で語る。激動(げきどう)の時代に独自の生きがいを創造するために、著者から21世紀を生きる若者へ送る人生、学問論。
*愉しむ=「楽しむ」の異表記。意味は同じだが、特に「愉快な」といった意味を強調する意味で用いられることが多い。
*フィールズ賞=数学の分野で著しい業績を上げた研究者に贈られる賞。
*半生=一生(いっしょう)のなかば。また、それまでの人生。
*没頭=一つの事に熱中すること。
*挫折=目的をもって続けてきた仕事などが中途でだめになること。くじけ折れること。
*激動=激しくゆれ動くこと。
『明治ガールズ 富岡製糸場で青春を』 藤井 清美 KADOKAWA
江戸から明治に時代が移ってすぐのこと。松代藩の中級武士だった横田家の娘・英は困惑(こんわく)していた。降って湧(わ)いた縁談(えんだん)を前に、身分違いの幼なじみへの淡(あわ)い想いが、胸にある。一方、区長を務める英の父もまた、困惑していた。富岡にできる最新の製糸場のため、工女(こうじょ)を集めねばならないのだ。その話を聞いた英は、縁談を先延ばしにするために、つい言ってしまう。「わたし、富岡製糸場に参(まい)ろうと思います」そして英の言葉をきっかけに、少女たちが集まって…。初めての長旅、共同生活、そして仕事。あの時代、あの場所で生きた少女たちの、瑞々(みずみず)しい青春記録。人気脚本家、小説初挑戦作。
*困惑=困って、どうしてよいかわからないこと。
*縁談=結婚や養子縁組の相談。
*工女=雇われて工場や作業場で働く女性。
*瑞々しい=
(1)つやがあって若々しい。つやつやと輝いている。
(2)若々しく新鮮である。
『ビッグデータと人工知能 可能性と罠を見極める』 西垣 通 中公新書
ビッグデータ時代の到来、第三次AI(Artificial Intelligence=人工知能)ブームとディープラーニングの登場、さらに進化したAIが2045年に人間の知性を凌駕(りょうが)するというシンギュラリティ予測…。人間とAIはこれからどこへ向かっていくのか。本書は基礎情報学にもとづいて現在の動向と論点を明快(めいかい)に整理し分析。技術万能主義に警鐘(けいしょう)を鳴らし、知識増幅と集合知を駆使(くし)することによって拓(ひら)かれる未来の可能性を提示(ていじ)する。
*ビッグデータ=情報通信技術(ICT=Information and Communication Technology)の進歩によってインターネット上で収集、分析できるようになった膨大なデータ。
*AI=コンピューターで、記憶・推論・判断・学習など、人間の知的機能を代行できるようにモデル化されたソフトウエア・システム。
*ディープラーニング=深い、すなわち、層の数が多いニューラルネットワークを用いた機械学習を意味し、深層学習と訳される。
**ニューラルネットワーク(NN=Neural Network)=人間の脳内にある神経細胞(ニューロン)とそのつながり(=神経回路網)を、人工ニューロンという数式的なモデルで表現したもの。
*凌駕=他のものを追い抜いてその上に立つこと。
*シンギュラリティ=AI(人工知能)が人類の知能を超える転換点。または、それがもたらす世界の変化のこと。
*明快=気持がよいほど、はっきり筋道が通っていること。
*技術万能主義=どんな種類の社会問題も、技術的手段によって解決することができ、技術進歩によって引き起こされた社会問題もまた、究極的には技術進歩によって克服される、という見解。
*警鐘=
(1)火災・洪水などの、警戒を促すために鳴らす鐘。
(2)危険を予告し、警戒を促すもの。警告。
*駆使=追い使うこと。特に、機能・能力などを思いのままに自由自在に使うこと。
*拓く=未開の土地を切りひらく。今までなかったことを始める。
*提示=
(1)その場に出して示す(見せる)こと。
(2)広く知らせる(=示)ための提出。
『ダック・コール』 稲見 一良 ハヤカワ文庫
石に鳥の絵を描く不思議な男に河原(かわら)で出会った青年は、微睡む(まどろむ)うち鳥と男たちについての六つの夢を見る―。絶滅(ぜつめつ)する鳥たち、少年のパチンコ名人と中年男の密猟(みつりょう)の冒険、脱獄囚(だつごくしゅう)を追っての山中のマンハント、人と鳥と亀との漂流譚(ひょうりゅうたん)、デコイと少年の友情などを。ブラッドベリの『刺青(いれずみ)の男』にヒントをえた、ハードボイルドと幻想(げんそう)が交差する異色作品集。“まれに見る美しさを持った小説”と絶賛(ぜっさん)された第四回山本周五郎賞受賞作。
*微睡む=
(1)少しの間うとうとする。
(2)眠る。寝入る。
*絶滅=すっかり滅びて絶えること。また、滅ぼし絶やすこと。
*密猟=国際間の協定や法令を無視して陸上の動物を採取すること。
*マンハント=犯人捜査
*譚=物語を語る。また、物語。
*刺青=針・刃物・骨片などで皮膚を刺突(しとつ:突き刺すこと)、切るなどして、そこに墨(すみ)・煤(すす)・朱(しゅ)などの色素を入れ着色し、文様・文字・絵柄などを描く手法、および、その手法を使って描かれたもの。
*ハードボイルド=
(1)第一次大戦後のアメリカ文学に現れた創作態度。現実の冷酷(れいこく)・非情(ひじょう)な事柄を、情緒表現をおさえた簡潔な文体で描写する。
(2)感情をおさえた行動的な主人公の登場する探偵小説の一ジャンル。
『食の人類史 ユーラシアの狩猟・採集、農耕、遊牧』 佐藤 洋一郎 中公新書
人は食べなければ生きていくことはできない。人類の歴史は、糖質(とうしつ)とタンパク質のセットをどうやって確保するかという闘い(たたかい)だった。現在、西洋では「麦とミルク」、東洋では「コメと魚」の組み合わせが一般的だ。だが、日本を例にとっても山菜を多食(たしょく)する採集文化が色濃く残っているように、食の営み(いとなみ)は多様である。本書は、ユーラシア全土で繰り広げられてきた、さまざまな「生業(せいぎょう)」の変遷(へんせん)と集団間の駆け引きを巨細(こさい)に解読(かいどく)する。
*営み=
(1)物事をすること。行為。作業。
(2)生活のためにする仕事。
(3)したく。準備。
(4)神事・仏事を行うこと。
*生業=くらしを立てるための仕事。なりわい。
*変遷=時の流れとともに移り変わること。
*巨細=
(1)大きなことと小さなこと。
(2)細かく詳しいこと。また、そのさま。
*解読=古文書・暗号・古代言語などを読み解くこと。
『菜根譚』 洪 自誠 岩波文庫
「人よく菜根(さいこん)を咬(か)みえば、則ち(すなわち)百事(ひゃくじ:あらゆること)なすべし」。菜根は堅くて筋が多い、これをかみしめてこそ、ものの真の味わいがわかる。中国明代の末期に儒・仏・道の三教(さんぎょう)を兼修(けんしゅう)した洪自誠が、自身の人生体験を基(もと)に、深くかみしめて味わうべき人生の哲理(てつり)を簡潔(かんけつ)な語録(ごろく)の形に著(あらわ)わした。的確な読み下し(よみくだし)、平易(へいい)な訳文。更に多年研究の成果は注と解説にも充分に盛りこまれている。
*三教=中国において、儒教・仏教・道教の三つの宗教を指す。
*兼修=二つ以上のものを同時に並行して学ぶこと。
*哲理=哲学上の道理。人生や世界の本質などに関する奥深い道理。
**哲学=世界や人間についての知恵・原理を探究する学問。
*語録=
(1)儒者・禅僧などの学説・教理に関する言葉を記録したもの。
(2)広く、偉人・有名人などの言葉・短文を集めたもの。
*的確=的(まと)をはずれず確かなこと。真相を突いていて正確なこと。
*読み下し=
(1)初めから終わりまで読むこと。
(2)漢文を訓読すること。
*平易=わかりやすいこと。やさしいこと。
『願いながら、祈りながら』 乾 ルカ 徳間文庫
まるで時の女神が回収し忘れたようだ。北の大地の片隅(かたすみ)に、ぽつんとたたずむ中学校分校には、一年生四人と三年生一人が学んでいた。たった五人でも、自称霊感(れいかん)少女もいれば、嘘つきな少年もいる。そこに赴任(ふにん)してきたのは、まったくやる気のない若い教師。けれど、やがて彼が知ることになる少年の嘘(うそ)の痛ましい理由とは?ときには悩み、傷つきながらも、成長していく五人の、胸を打つ青春前期物語。
*赴任=任地におもむくこと。
**任地=仕事のために居住(住むこと)する土地のこと。
**おもむく=ある場所・方角に向かって行く。
*霊感=
(1)霊的なものを感ずる不思議な感覚。インスピレーション。
(2)神仏の不思議な感応。
*胸を打つ=強く感動させる。心を打つ。
『「里」という思想』 内山 節 新潮選書
世界を席巻(せっけん)したグローバリズムは、「ローカルであること」を次々に解体していった。たどりついた世界の中で、人は実体のある幸福を感じにくくなってきた。競争、発展、開発、科学や技術の進歩、合理的な認識と判断―私たちは今「近代」的なものに取り囲まれて暮らしている。本当に必要なものは手ごたえのある幸福感。そのために、人は「ローカルであること」を見直す必要があるのだ。
*席巻=むしろを巻くように領土を片端から攻め取ること。はげしい勢いで、自分の勢力範囲をひろげること。
**むしろ=藺(い)・藁(わら)・竹・蒲(がま)などの「植物」を編んでつくった敷物(しきもの)。
*グローバリズム=国家を超えて、地球全体を一つの共同体とみる考え方。
*ローカル=
(1)その地方に限定される特有なこと。また、そのさま。風俗・自然・情緒(じょうちょ)などにいう。
**情緒=喜怒哀楽などの様々な感情。
(2)他の語と複合して用い、地方の、地方特有の、また、局地(限られた一定の区域・土地)的・局所(範囲が限られた所)的な、の意を表す。
(3)あるコンピューターと、その入出力チャンネルに直結された端末装置などで構成される利用環境。
『無名草子』 新潮社
好評シリーズが装いを新たに。古語辞典は不要です! 昔男をめぐる珠玉(しゅぎょく)の歌物語の数々が「みやび」な世界を織りなす『伊勢物語』。継母(ぎぼ)にいじめられ、「落窪(おちくぼ)の君」と呼ばれていた女君(おんなぎみ)の波瀾万丈(はらんばんじょう)の運命を描く、平安時代のシンデレラストーリー『落窪物語』。座談(ざだん)形式で、『源氏物語』や『伊勢物語』を論じ小野小町や清少納言や紫式部を批評(ひひょう)する、中世初期の異色評論『無名草子』。
*珠玉=
(1)海から産する玉と、山から産する玉。真珠と宝石。
(2)美しいもの、りっぱなもののたとえ。特に、詩文などのすぐれたものを賞していう。
**賞する=
(1)ほめたたえる
(2)美しいものや趣(おもむき:味わい。面白み。)の深いものを見て楽しむ。鑑賞する。
*みやび=ものの趣を解(かい)し、けだかく、動作なども優美(ゆうび)なこと。
*義母=義理の母。養母、また妻や夫の母など。
*女君=
(1)貴族の息女(身分ある人の娘のこと。)の敬称。姫君。
(2)貴族の妻の敬称。
*波瀾万丈=劇的な変化に富んでいること。
**劇的=劇を見ているように緊張や感動をおぼえるさま。
*座談=
(1)すわって気楽に話し合うこと。
(2)その場だけの話。
*批評=事物の善悪・優劣・是非などについて考え、評価すること。
**優劣=すぐれていることと、おとっていること。
**是非=良い(=是)ことと悪い(=非)こと。
『くちびるに歌を』 中田 永一 小学館文庫
長崎県五島列島のある中学校に、産休に入る音楽教師の代理で「自称ニート」の美人ピアニスト柏木はやってきた。ほどなく合唱部の顧問を受け持つことになるが、彼女に魅せられ、男子生徒の入部が殺到。それまで女子部員しかいなかった合唱部は、練習にまじめに打ち込まない男子と女子の対立が激化する。一方で、柏木先生は、Nコン(NHK全国学校音楽コンクール)の課題曲「手紙~拝啓十五の君へ~」にちなみ、十五年後の自分に向けて手紙を書くよう、部員たちに宿題を課した。そこには、誰にもいえない、等身大の秘密が綴られていた。青春小説の新たなるスタンダード作品、文庫化!
*拝啓=(つつしんで申し上げます、の意)手紙の初めに書くあいさつの語。
*読後=本などを読んだあと。
*切ない=
(1)(寂しさ・悲しさ・恋しさなどで)胸がしめつけられるような気持ちだ。つらくやるせない。
(2)大切に思っている。深く心を寄せている。
(3)苦しい。肉体的に苦痛だ。
(4)せっぱ詰まった状態である。
(5)生活が苦しい。
『「言葉にできる」は武器になる。』 梅田 悟司 日本経済新聞社出版社
『世界は誰かの仕事でできている。』『この国を、支える人を支えたい。』トップコピーライターが伝授する、言葉と思考の強化書、遂に完成。「人に伝える・動かす」は、多くの人が様々な場面で直面し、悩むテーマ。いかに言葉を磨き上げるか? 誰にでもできる方法論を具体的に解説する本書は、ビジネスコミュニケーションや企画のプレゼンなどの仕事シーンはもちろん、私生活でのアピール、さらには就職・転職活動にも役立つ考え方が満載の一冊。
*コピーライター=商品や企業を宣伝するため、新聞・雑誌・ポスターなどのグラフィック広告、テレビCM、ラジオCM、ウェブサイトやバナー広告などに使用する文言(コピー)を書くことを職業とする人のこと。
『宇治拾遺物語』 角川ソフィア文庫
日本、インド、中国などを舞台に物語が繰り広げられる鎌倉時代の説話集。教訓めいた話もあるものの、「善」「悪」と単純に割り切ることのできないこの世の理不尽(りふじん)やモヤモヤを取り込みながら、ユーモラスに展開していく。総ふりがなつきの原文と現代語訳に、ていねいな解説を付した、宇治拾遺物語入門の決定版!
*説話=人々の間に語り伝えられた話で、神話・伝説・民話などの総称
*理不尽=道理をつくさないこと。道理に合わないこと。また、そのさま。
『君だけのシネマ』 高田 由紀子 PHP研究所
君の居場所(いばしょ)は君だけが知っている。過干渉(かかんしょう)の母を新潟に残し父とともに佐渡へ転校してきた史織。「風のシネマ」をオープンした祖母やクラスメイトと出会う中で大切なものに気づいていく葛藤(かっとう)と成長の物語。
*過干渉=ある対象に対し、必要以上に干渉すること。
*葛藤=
(1)人と人が互いに譲らず対立し、いがみ合うこと。
(2)心の中に相反する動機・欲求・感情などが存在し、そのいずれをとるか迷うこと。
『高校生と考える希望のための教科書』より「芸術と生きること」 李 禹煥 左右社
お金をめぐる仕組みのゆらぎ、人工知能の発達、細分化(さいぶんか)する働き方……
数年先の未来を描くことさえも困難なように見えても、
「新しい教養」はいまこの瞬間にも生まれ広がりつつある。
どんな研究が、どんな考え方が「新しい潮流(ちょうりゅう)」や「21世紀の常識」になるのか?
これからを生きる若い人の希望のための、
そしてビジネスマンにも現実的に役立つ、
22人のトップランナーによる新しい羅針盤(らしんばん)。
入試問題にも多数出題されている好評シリーズ第4弾。
*細分化=細かく分けること。また、細かく分化すること。
*潮流=
(1)潮の流れ。
(2)海の干満によっておこる海水の流れ。一日に二回ずつ、その流れの方向が逆になる。
(3)時勢の動き。時代の流れ。
*羅針盤=磁石を用いて方角を知る計器。船や飛行機などで用いる。
『噺本大系 第六巻』より「軽口ひやう金房」 東京堂出版
近世の庶民文芸の一つに、短い笑話(しょうわ)を集めた噺本(はなしぼん)がある。各時期によって、様々な呼び方で呼ばれ、形式や体裁(ていさい)、内容や表現などに変化があって一様ではない。しかし一時期の流行ではなく、噺本は笑話集として全期間一貫して出版された。発表された原形のままでも容易に理解され、愛好される内容が多くある点でも特異な存在である。
*笑話=わらいばなし。
*噺本=江戸時代の庶民文芸の一種で,短い笑話を集めた本。
*体裁=
(1)外から見た感じ・ようす。外見。外観。
(2)世間の人の目にうつる自分のかっこう。世間体。みえ。
(3)それらしい形式。
(4)相手を喜ばせるような振る舞いや口先だけの言葉。
『戦国策』 劉向/編 講談社学術文庫
前漢(ぜんかん)末の学者劉向(りゅうきょう)が、皇帝の書庫にあった「国策」「国事」などの竹簡(ちくかん)を編んで作った『戦国策』。三三編四八六章の長編を、人物編、術策編、弁説(べんぜつ)編の三編百章に再構成して平易(へいい)に解説。陰謀(いんぼう)が渦(うず)巻く戦国乱世(らんせ)を生き抜く巧智(こうち)・奸智(かんち)や説得の技法とは何か。「虎の威を借る狐(とらのいをかるきつね)」「漁夫の利」「先(ま)ず隗(かい)より始めよ」など故事(こじ)名言の由来と古代中国の奥深い知恵を学ぶ。
*前漢=中国古代の王朝。秦(しん)の滅亡後、前202年、楚(そ)の項羽(こうう)を破った漢王劉邦(りゅうほう)(高祖)が建国。都は長安。
*国策=国家の政策。
*国事=国家に直接関係する事柄。特に、政治にかかわる事柄。
*竹簡=中国古代の書写材料の一つ。紙が発明される以前に用いられたもので,竹を細い短冊形に削り,火にあぶって油抜きし,文字を書いた。普通の形式は長さ 25cm,幅 3cmぐらいである。
*術策=はかりごと。計略。謀略。策謀。
*弁説=物事の道理(=物事の筋道)を説き明かすこと。
*陰謀=ひそかにたくらむ悪いはかりごと。
*巧智=物事を運ぶ才知にすぐれていること。
*奸智=悪いことを考えだす知恵。悪知恵。
*虎の威を借る狐=権勢を持つ者に頼って、威張る小者のこと。
*漁夫の利=当事者同士が争っているうちに、第三者が何の苦労もなく利益をさらうことのたとえ。
*先ず隗より始めよ=
(1)遠大な事をするには、手近なことから始めよ。
(2)転じて、事を始めるには、まず自分自身が着手せよ。
*故事
(1)昔あった事柄。古い事。
(2)昔から伝わってきている、いわれのある事柄。古くからの由緒(ゆいしょ)のあること。
**由緒
(1)物事の起こり。また、今に至るまでのいきさつ。いわれ。
(2)現在に至るまでのりっぱな歴史。来歴。
『流星と稲妻』 落合 由佳 講談社
熊のような巨体の阿久津善太は、授業で、もう一人の剣道経験者、蓮見宝と模範(もはん)試合をすることになるが、小柄でおどおどしている宝に、あざやかに「抜き胴」を決められてしまった。クラスの中では「根性なしとビビり」と、からかわれている善太と宝は、剣を交えるうちに互いをかけがえのないライバルとして意識するようになっていく。
*模範試合=勝敗に重きをおかず、そのスポーツの紹介・普及などのために、模範として行う試合。
*抜き胴=相手の面打ちなどの打ち込みに対して、それをかわしながら右胴へ打ち抜くこと。
『知の体力』 永田 和宏 新潮新書
「答えは必ずある」などと思ってはいけない。“勉強”で染みついた呪縛(じゅばく)を解くことが、「知の体力」に目覚める第一歩になる。「質問からすべては始まる」「孤独(こどく)になる時間を持て」「自分で自分を評価しない」「言葉にできないことの大切さとは」―。細胞生物学者にして日本を代表する歌人でもある著者が、これから学ぶ人、一生学び続けたい人たちにやさしく語りかける。自力で生きぬくための本物の「知」の鍛錬(たんれん)法。
*呪縛=まじないをかけて動けなくすること。心理的な強制によって、人の自由を束縛すること。
*鍛錬=
(1)金属を打ってきたえること。
(2)きびしい訓練や修養を積んで、技芸や心身を強くきたえること。
**修養=徳性(=道徳心。道徳意識)をみがき、人格を高めること。